2024年に発売30周年を迎え、UCCを代表するブランドのひとつとして多くの人に愛され続けている「UCC BLACK無糖」。現在は飲料ブランドチームマネージャーとして、社内で一番長く「UCC BLACK無糖」と向き合ってきた紙谷が考える未来予想図とは。
INDEX
“別格”のブランドを担当する自負と緊張感
私が「UCC BLACK無糖」のマーケティングを担当するようになって10年が経ちました。今でもすごいなと思うのは、発売以来、レギュラーコーヒー100%、香料無添加にこだわってきたことです。まさに「原材料:コーヒー、以上。」であって、30年間、そのコンセプトがブレていない。これって本当にすごいことだと思うんです。
缶コーヒーというのは、香料を加えると格段に味の輪郭も作りやすくなって、製造も楽になります。でも、それをしない。原料となるコーヒー豆だけで勝負しています。
コーヒーは農産物ですから当然毎年味は変わります。ロットによっても微妙に違ってくる。それを調整しながら、何も添加せずに「UCC BLACK無糖」の味に仕上げる。自慢じゃないですが、これってなかなかすごいことなんです。
でも、これがコーヒー会社であるUCCのこだわりであり、それだけ諸先輩方の思いや情熱が詰まった“別格”のブランドなんです。
ですから、それらを引き継いだ身としては緊張感もあります。それと同時にやりがいも感じるところです。
「何を変えて、何を守るのか」
私は大学では分子生物学の研究をしていたので、研究職として入社しました。大学時代からコーヒー由来のクロロゲン酸(糖の分解と吸収を抑え、食後の血糖値の上昇を緩やかにするポリフェノールの一種)などにも馴染みがあり、入社後の日々は充実していました。
でも、そのうちに「製品開発に携わりたい」という思いが湧き上がってきまして。研究畑からマーケティング部に異動したのが2013年です。
研究者としてコーヒーの成分や機能については知識のあった紙谷だが、「マーケティングのことは右も左もわかりませんでした」と言う。だが、コーヒーのことをもっと知りたい、と猛勉強を開始。UCCコーヒーアドバイザーやCQI認定Qグレーダーなど、合格することが難しい社内資格なども次々に取得した。
「UCC BLACK無糖」の担当についたのは、マーケティング本部に異動にした翌年です。
何も分からないなりにずっとブランディングを考えていました。どうすればもっとおいしくなるのか。どうすればもっと多くの人に手にとってもらえるのか。
「UCC BLACK無糖」はUCC独自の特許製法である「3温度ナチュラルドリップ製法(※)」で作られている。「これは本当に贅沢な抽出方法であるだけでなく、缶に充填した後の加熱処理のことも考えて“引き算”の味覚設計をしています」。
※特許第6086640号
→UCC BLACK 無糖 ブランドサイトはこちら
つまり、すごく手の込んだ製法なのですが、でも、もっとできるんじゃないかと思ったのも事実で……。マーケティング担当者として、「UCC BLACK無糖」というブランドを守りながら、より進化させるにはどうすればいいのか。研究職時代に得た知見をベースにして試行錯誤する日々でした。
同じブラックでも同じではない
ちょっと話は脱線しますが、「UCC BLACK無糖」が発売されたのは1994年ですが、その前にもUCCがブラックの缶コーヒーを世に出していたことはご存知でしょうか。
実は、その7年前の1987年には缶入りのブラックコーヒーを発売しているんです。当時はまだまだ甘い缶コーヒーが全盛の時代です。その中で無糖のブラックコーヒーを世に問うた。でも、結果は鳴かず飛ばず。それにもめげずに再度チャレンジしたのが「UCC BLACK無糖」というわけです。
当時、「健康志向」という一部のニーズをいち早く捉え、商品特徴の「無糖ブラック」をロゴとしてわかりやすいデザインとして誕生し、それから30年、一部のお客様からの強い要望で復活したと聞いています。それから30年、多くの皆様に愛されてきたというわけです。
2024年現在、「UCC BLACK無糖」ブランドとしては「UCC BLACK無糖」「UCC BLACK無糖RICH」「COLD BREW BLACK」があります(さらに30周年限定品「UCC BLACK無糖 ブルーマウンテン&キリマンジァロ リキャップ缶275g」を期間限定発売)。
「UCC BLACK無糖RICH」は複数の焙煎度で煎り分けた多様な産地の豆を贅沢に1.2倍使用しています。この“RICH”というのは、全国コーヒー公正取引協議会から正式に認定されたもので、定められた基準値よりふんだんに豆を使っています。
「COLD BREW BLACK」はすっきりしたキレを前面に押し出した製品でありながら、コーヒーらしいコクも楽しめる。それでいて飲み飽きない。ぜひゴクゴクと喉を鳴らして飲んでいただきたいです。
「UCC BLACK無糖」の担当者として挑戦
繰り返しになりますが、「UCC BLACK無糖」はUCCを代表するブランドであり、日本全国の缶コーヒーの中でも1から10までこだわり抜いている製品だと自負しています。
ブランド誕生から30周年。まずは、いつも愛飲してくださっているお客様に感謝を伝えたいです。手にとって飲んでいただくたびに感動を与えられたらと思っています。
さらに、これまで飲んだことがない方にも「かっこいいな」と思ってもらえる世界観を持ったブランドにしたい。
これは、缶コーヒーを担当している私自身の裏テーマでもあるのですが、消費者の方が飲みたいコーヒーとして、最初に手を伸ばしてもらえるのが缶コーヒーだといいなと。そのためにはもっともっと缶コーヒーをおいしくしたいですし、そのためにできることは何でもしたいんです。
あと、今後やってみたいことは、いわゆる原料としている豆を、液体にしてからではなく原料の豆のまま販売すること。実は数年前に、原料の豆を社内でドリップして配ったことがあるのですが、非常に評判がよかったんです。同僚の社員からも「おいしい!」と言ってもらえたので、もし店頭でも販売できたとしたら喜んでもらえるかもしれませんし、缶入りの「UCC BLACK無糖」を見直してもらうきっかけにもなるのかなと思っています。
愛用のコーヒーグッズは
上島珈琲店で使われている柳宗理のカップ&ソーサー
“日本工業デザイン界のパイオニア”である柳宗理によるカップ&ソーサーを普段から愛用。「シンプルで使いやすいのが気に入ってて、ずっと使っています」
心に残る、最高のコーヒーは?
入社式で乾杯した「UCC BLACK無糖」
研究職として入社当時はその後自分がマーケティング担当になると思わなかったが、あの時飲んだ「UCC BLACK無糖」の味は忘れられない。
マーケティング本部 飲料マーケティング部
飲料ブランドパーソナルユースチーム チームマネージャー
紙谷雄志(かみたに ゆうじ)
2006年入社。大学で分子生物学を学んでいた経験を活かし、R&Dセンター(現・UCC イノベーションセンター)に配属。研究職としてコーヒークロロゲン酸の基礎研究などを行った後、2013年に飲料マーケティング本部に異動。2014年から「UCC BLACK無糖」を担当する。UCCコーヒーアドバイザー。CQI認定Qグレーダー。
(部署名・役職は取材当時の情報です)