新技術「水素焙煎」で脱炭素とコーヒーのおいしさを追求する[COFFEE CREATOR’S FILE 29 藤原朋宏] | コーヒーと、暮らそう。 UCC COFFEE MAGAZINE

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新技術「水素焙煎」で脱炭素とコーヒーのおいしさを追求する[COFFEE CREATOR’S FILE 29 藤原朋宏]

COFFEE CREATOR’S FILE 29 KV画像

「一杯のコーヒーができるまで」…そこにはUCCのコーヒークリエイターたちの「おいしい事実」があります。

大型水素焙煎機という世界初の試みに挑む

近年、カーボンニュートラル実現のカギとなるクリーンエネルギーとして、世界中で注目を集めているのが「水素」です。

その注目度と需要は急速に拡大していて、各国の水素産業に対する支援も技術開発の段階から社会実装のフェーズへと移行しつつあります。日本でも2024年5月に、水素の社会実装を強力に推進していくための法律「水素社会推進法」が成立しました。

工場でのインタビューの様子

そういった流れを受け、UCCでも脱炭素社会の実現に向けて複数の企業や団体と業界を超えたコラボレーションを行っています。

私たちUCCは、小型のテスト焙煎機で実証研究を重ねてきましたが、実際に工場で稼働する大型水素焙煎機では、再生エネルギーをベースとした電気で水の電気分解を行って作った「グリーン水素」を熱源として利用する予定です。UCCはこの技術(※1)で2023年に特許を出願しました。

工場で使用している水素ガス
水素ガス(写真左)と天然ガス(右)
水素ガス(写真左)だけでなく従来の天然ガス(右)も同時に利用できるのも特徴のひとつ。

そして、いよいよ2025年春にはレギュラーコーヒー製造の主力工場「UCC富士工場」の、大型水素焙煎機で水素焙煎コーヒーを量産する予定です。これはもちろん世界初(※2)の試みです。

「最初は水素でも普通に焙煎できることが目標だったが…」

このプロジェクトが始まった時、「水素でコーヒーを作る」と聞いて、すごくワクワクしました。でも、正直なところ、研究対象としてはまったく未知のものだったので、期待と不安が入り混じった気持ちでもありましたね。

まずは水素を熱源として使いながら、従来の天然ガスを使用した場合と遜色なくコーヒーを焙煎できるようになること。これが最初の目標でした。

工場での作業様子
工場での作業様子

焙煎経験の豊富な先輩社員と実験を繰り返すうちに、なんとか最初の目標はクリアできるようになりました。

環境面だけで見れば、確かに水素焙煎には非常に大きなメリットがあります。たとえば従来であれば、焙煎機1台あたりのCO2排出量は年570トン(※3)。これが水素焙煎機に置き換わるとゼロになる。かなりインパクトのある環境負荷軽減につながります。

でも、それがお客さまにとってはどんなメリットがあるのか。

工場での作業様子
焙煎したコーヒー

「水素焙煎ならではの強みとはなんだろう」「従来の焙煎と比べて何らかの優位性は見いだせるのか」「環境面以外での水素焙煎の価値とは…」「いや、“何か”きっとあるはずだ」と、ずっと考え続け・・・その「何か」を求めて、実験を繰り返しました。

そのころ、R&Dの分析メンバーやバーナーメーカー・焙煎機メーカーとも連携し、製品開発チームやマーケティング部門からも参画者が増えて、どんどんプロジェクトが大きくなっていったんです。

「水素焙煎」がコーヒーをさらにおいしくする理由

インタビューの様子

そうして熱源としての水素の特性を突き詰めていくうちに、従来の天然ガスより広い範囲で火力をコントロールできることがわかってきました。

しかし、社内だけでは判断つきかねた部分もありましたので、水素に強みを持つガス会社やバーナーメーカーとのディスカッションも行ったところ、「確かにそれは水素の特性です」と見解が一致しました。水素の特性として専門家には当然なことだったのですが、我々にとってはとても大きな発見でした。

コーヒーの焙煎にとって、焙煎時のコーヒー豆の温度推移、いわゆる焙煎プロファイルの調整は非常に重要な要素です。焙煎時の温度コントロールの幅が広いことは、この焙煎プロファイルの幅を広げることに直結します。それにより、今まで以上に豆本来の特性を引き出すことも可能になりますし、今までにない味を創出することにも繋がります。

焙煎プロファイルの図
インタビューの様子

すでにUCCでは焙煎のプロファイルを、どんな味わいを目指すかによって使い分けていますが、今後は従来の天然ガスでやってきたパターンに「水素焙煎」のパターンが加わるようになるので、それこそ無限にプロファイルが作れる可能性があります。

まだまだ大きな可能性を秘めている水素のチカラ

私は、ただ単に水素焙煎をするだけならほかのコーヒーメーカーでもできると思っています。

でも、水素焙煎の特性を見出して、焙煎機に改良を加え、水素焙煎ならではのコーヒーを提案していけるのは、焙煎機の開発も行うコーヒー専業メーカーであるUCCだからこそ可能なことではないでしょうか。そこを突き詰めることで、食品業界での先進事例として、水素焙煎をUCC独自の強みにできると考えています。

インタビューの様子

近い将来、石油や天然ガスといった化石燃料が水素燃料をはじめとしたクリーンエネルギーに置き替わっていく社会が必ず来ると思います。

そんな中、コーヒーや身近な食材の加工や製造に水素が活用されていくというのは、これからの水素社会を考える上でのひとつのきっかけになるのではと思います。

そして、水素焙煎の環境価値はもちろんですが、個人的には「水素焙煎のコーヒーがおいしい」という方向で認識してもらえるのが一番うれしいことですね。

  • ※1 水素を熱源とした場合、火力の調整幅が既存熱源より広いという特徴があり、幅広い熱風温度での焙煎が可能であるため、水素でしか出せない焙煎プロファイルと味覚が生み出せるという新技術。
  • ※2 世界で初めて水素熱源に対応するかたちで焙煎機そのものを独自に設計・開発し、継続的に水素焙煎コーヒーを量産(年間キャパシティ3,000トン以上)する。(UCC調べ)
  • ※3 2025年稼働予定のUCC富士工場工業用大型焙煎機の場合の、焙煎工程における排出量。(UCC調べ)

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「家でコーヒーを飲むときに、そのコーヒーの持つ特徴をより感じるために中細挽きと細挽きで挽き分けて飲みます。ただし、設定を調整するのが手間だったので粒度を固定したミルをそれぞれ用意して使い分けるようになりました。」

UCC上島珈琲株式会社 SCM本部 生産部 安全・設備課
藤原朋宏(ふじわら ともひろ)

2017年入社。大学では食品栄養学を専攻し、大学院生時代にUCC富士工場をインターンシップで見学。入社後はUCC北関東工場で生産の各部門を担当。2022年より水素焙煎の開発担当に。2025年春には、入社のきっかけにもなったUCC富士工場で水素焙煎機の実機が稼働開始予定。

(部署名・役職は取材当時の情報です)

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