今回は、さまざまな個性あるコーヒー豆を人型のモデルに当てはめながら、基本のブレンドの考え方をご説明していきます。
ブレンドの可能性は無限大!真に自分好みのコーヒーを創り出す楽しみ
「ブレンドコーヒー」とは、どんなコーヒーのことでしょうか?
カフェや喫茶店で聞く「ブレンドひとつ」などは、お馴染みのフレーズですよね。「ブレンド」と言えば、そのお店のベーシックな味を指すことも多いため、「ブレンド」=「コーヒー」くらいに捉えている方もいるかもしれません。
「ブレンド」とは、複数の種類のコーヒーを混ぜ合わせること。ブレンドすることで、単一の種類の豆(=ストレート豆)だけでは出せない風味を創り出すことができ、コーヒー豆の組み合わせ方によって広がる可能性は無限。
あなたがもし自分だけの味を創るとしたら…?ブレンドを創り出す方法は色々あると思いますが、今回は人型を使って、考え方を視覚的にわかりやすく解説してみます。
コーヒーのブレンド、基本の考え方は?
「混ぜ合わせる」と言っても、コーヒーには色々な種類があり、やみくもに合わせてしまうと味の迷子になってしまいます。また、使用するコーヒーの種類が多すぎてもバランスが崩れてしまったり、逆に、味が平担になってしまうことも。ブレンドを創る際に使うコーヒーは、だいたい3〜5種類程度がおすすめです。
「味」を視覚化!どんな人型モデルをつくりますか?
ここではわかりやすく役割を3つのポジションに分けて考えて行きましょう。まずブレンドを設計をするにあたり、考えるべきコーヒーの味わいを分解し、
・どんな種類の味わいか=「個性」
・コーヒーらしさや濃厚感=「コクの強さ」
・味わいの余韻=「後味」
に分けてみます。
さらに、この3つの要素を人の3つのパーツに振り分けます。
図のように、「個性」を出す部分を「顔」、コクの強さを表すボディ感を「胴体」、後味を「足」とし、どんなコーヒーをどれだけ使うかをパーツごとにイメージしていきましょう。
「個性」を際立たせたいときは「顔」を大きく、「余韻」を持たせたいなら「足」を長く、といった感じです。目に見えない「味」を視覚的にイメージすることで、出来上がりのコーヒーの味の特徴を捉えやすくなります。
STEP1 味わいの個性=「顔」を決めよう
最初にどんな「個性」を持たせたいか、「顔」となる部分を考えます。ちなみに「顔」にあたるコーヒーの割合は全体の3割以上とします。「個性」をとくに際立たせたい時は、5割程度まで使ってOKです。
味の特徴は浅炒りの方が出やすいので、ここでは代表的なコーヒーを浅炒りにしたときの味わい特徴を紹介します。
ブラジル(浅炒り)
アーモンド、ナッツ系やトースト、麦芽のような香ばしさが特徴。ブレンドのベースには最適。
モカ(浅炒り)
紅茶やグリーンアップルを髣髴(ほうふつ)させる青い果実のイメージの明るく軽やかな風味。
タンザニア(浅炒り)
グレープフルーツのような柑橘系のフルーティーで心地よい甘味を伴った酸味が特徴。
コロンビア(浅炒り)
円熟したコクがあり、バターのような肉厚な舌触り。キャラメルやドライフルーツのような甘い香りも持ち合わせる。
マンデリン(浅炒り)
豊かなコクを堪能できる。重厚感のあるビロードの舌触り。アプリコットや南国の果実味を伴う。
STEP2 ボディの強さを決めよう
次はボディ感、つまり、濃厚感やコクを担う部分を「胴体」として考えてみましょう。
ボディの強さを表現するためには、際立った味覚特徴があるコーヒーよりも、いわゆるコーヒーらしいベーシックな味わいを備えたコーヒーを使います。
いろいろな選択肢はあると思いますが、今回は基本をおさえるために、コクに特徴があるコロンビアか、すっきり系のタンザニアで違いを出してみましょう。
さて、あなたならどちらを選びますか?
STEP3 後味の余韻をどうつくる?
最後は「余韻」をこれを「足」のパーツに置き換えてみましょう。コーヒーを飲んだ後に口の中に残る後味が、長く続くのが好きか、キレのある方が好きか。
どちらがお好みでしょうか?
コーヒー全体の味のバランスをチェック!
3つのパーツを決めたら、それぞれをどのくらいの割合で配合するかを、全体の味のバランスで考えてみます。繰り返しますが、最初に「顔(個性)」を、そのあとで「濃胴体(厚さ・コク)」、「足(余韻)」を調整するのがポイントですよ。
…といっても、ちょっと難しいとは思いますので、「個性」に「モカ」を使ったブレンド例をいくつか紹介しましょう。
軽やかブレンド
「顔」を「モカ」にして個性を出しつつも、シュッとしたスタイルの人型にすると、モカの風味や特徴を主役に据えつつも、すっきりと後味軽やかなテイストになります。
モカ(浅炒り)5:タンザニア(浅炒り)3:ブラジル(深炒り)2
バランスブレンド
また、モカを「顔」にしながらも、しっかりとした「胴体」にし、すらっとした「足」で余韻を持たせたら均整のとれた人型になりました。比較的バランスの良い人型になりましたね。モカの風味や特徴を感じると共に、コクも深く、飲んだ後の余韻も長く感じられるブレンドです。
モカ(浅炒り)4:コロンビア(浅炒り)3:コロンビア(深炒り)3
重厚感ブレンド
そして個性はひかえめにしつつ、コロンビアの深炒りを配し、小さな「顔」にがっしりとした「胴体」と「足」を持つ人型のブレンドにしてみました。
モカの風味をほんのりと漂わせつつ、コクとキレの良さがしっかりと感じられるブレンドです。
モカ(浅炒り)3:コロンビア(浅炒り)3:コロンビア(深炒り)4
マイブレンドを楽しもう!
いかがでしたか?目に見えない味の妙も、人型にすることで少しイメージしやすくなったでしょうか。色でコーヒーの種類、色の濃淡で焙煎度合い、大きさで配合割合を表すとわかりやすいのではないでしょうか?
今回は、限られた種類や焙煎度で解説しましたが、さらに精製方法の異なる種類を増やしたり、焙煎度合いを変えたりすることで、無限の味わいを生み出すことができます。
もしあなたが自分好みの味をもっと突き詰めてみたくなったら、ぜひマイブレンドにチャレンジしてみてください。 配合を少しづつ変えながら真摯に自分の味覚と向き合って「これだ」と思える味に出会える瞬間は大きな喜びです。自分の求める味を探究してみてくださいね。
中平 尚己 Naomi Nakahira UCCコーヒーアカデミー 非常勤講師 UCC農事調査室 室長 ・UCCコーヒーアドバイザー ・UCCコーヒー鑑定士 ・(ブラジル)コーヒー鑑定士 ・(アメリカ)CQI認定Qアラビカグレーダー