コーヒーの競技会「ジャパン バリスタ チャンピオンシップ」って何?【教えて、コーヒーアカデミー!】 | コーヒーと、暮らそう。 UCC COFFEE MAGAZINE

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コーヒーの競技会「ジャパン バリスタ チャンピオンシップ」って何?【教えて、コーヒーアカデミー!】

例えば、誰かと同じコーヒー豆を使い、同じ道具で同じ淹れ方をしたとしても、同じ味にならないのがコーヒーの面白いところ。さまざまな産地や品種があるコーヒー豆、千差万別の焙煎具合、多彩な淹れ方…と、選択肢は無限。ここではそんな至高の1杯に情熱を傾けるスペシャリストが出場する競技会を、村田講師の解説を交えながら紹介します!

多彩なコーヒーの競技会、知っていますか?

エスプレッソを淹れるサービスのプロ「バリスタ」や、サイフォンを使ったコーヒー抽出のスペシャリスト「サイフォニスト」、コーヒー豆の味覚検査をする「カップテイスター」など、コーヒーに携わる人の中にはさまざまな専門家がいます。彼らが腕を競い合い、頂点を目指すコーヒーの競技会が国内外で開かれていることを知っていますか?その数は国内外で20以上とも!
そんな数ある競技会から、今回はSCAJ主催の日本国内の大会について、いくつかピックアップして紹介します

ジャパン バリスタ チャンピオンシップ(JBC)

主催は「日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)」。同協会がスペシャルティコーヒーの普及を目的として開催しています。どんなスペシャルティコーヒーをどのように使用してどんな味わいを目指しているか、という点も大きな評価のポイント。国内最高峰のバリスタを決める、権威ある大会としてコーヒー業界で広く知られています。

競技会名:ジャパン バリスタ チャンピオンシップ(JBC)
主催者:SCAJ
何で競うか:エスプレッソの抽出、提供スキル
開催地:日本

ジャパン サイフォニスト チャンピオンシップ(JSC)

上述の「JBC」のサイフォン部門として2003年に誕生した大会です。「サイフォン」使った抽出方法は、所作も美しく、見ているだけでも楽しい!参加している競技者のきめ細やかで手際の良い動き、趣向を凝らしたパフォーマンスやプレゼンテーションは必見です。

競技会名:ジャパン サイフォニスト チャンピオンシップ(JBC)
主催者:SCAJ
何で競うか:サイフォンの抽出、提供スキル
開催地:日本

ジャパン カップテイスターズ チャンピオンシップ(JCTC)

こちらはスペシャルティコーヒーを評価する時の「カッピング」と呼ばれる手法で、味覚の正確さを競う大会です。 目の前の3つのカップのうち、あらかじめ用意されているひとつの異なる味を見つけ出していく、というもの。2009年の世界大会に向けて、日本での第1回目の大会が開催されました。

競技会名:ジャパン カップテイスターズ チャンピオンシップ(JCTC)
主催者:SCAJ
何で競うか:カッピング技術
開催地:日本

ジャパン コーヒー イングッド スピリッツ チャンピオンシップ(JCIGSC)

コーヒーにウィスキーやスピリッツなどを加えて作る、オリジナルコーヒーカクテルの大会。2013年に初めての日本大会が行われました。コーヒーを使用したアルコールベースのデザイナードリンク(ホットもしくはコールド)を2杯作って競います。

競技会名:ジャパン コーヒー イングッド スピリッツ チャンピオンシップ(JCIGSC)
主催者:SCAJ
何で競うか:アルコール入り、オリジナルカクテル
開催地:日本

日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)について

「ジャパン バリスタ チャンピオンシップ(JBC)」ってどんな競技会?審査員も務める村田講師に聞いてみた!

国内最高峰のバリスタを決める権威ある大会「ジャパン バリスタ チャンピオンシップ(JBC)」は、前述のとおり、スペシャルティコーヒーの普及を目的に開催されています。出場経験のある村田講師に、どのような競技会か話を聞きました。

バリスタとはどういう人?

大会の名前にもなっている「バリスタ」は、「エスプレッソを淹れるサービスのスペシャリスト」とのこと。
熟練した技術や技能をもって単においしいエスプレッソを淹れられるだけでなく、職人としての心意気や、知識、そしてサービス精神やコミュニケーション能力までも含むもの。飲む人に感動を伝えられることもバリスタの大切な要素なのだとか。

競技者はエスプレッソで競う

大会は予選、準決勝、決勝の順に進められます。前提として、出場者は競技会で使うスペシャルティコーヒーの豆を自分で用意しなければなりません。

そして、自前のスペシャルティコーヒーで抽出したエスプレッソを基本に、準決勝・決勝では3種類のコーヒーで審査されます。1つはエスプレッソ、2つ目はエスプレッソにミルク加えたドリンク、3つ目はエスプレッソに副材料をあわせたドリンクです。どちらも審査員の目の前でプレゼンテーションをしながらサービスします。

専門の審査員が、味、技術などを総合的に評価する

ジャッジは、味(センサリー)、技術(テクニカル)、プレゼンテーションを含む総合評価(ヘッド)の各専門の審査員によって評価されます。

たとえばテクニカルの審査員は、出場者がエスプレッソを抽出するとき、エスプレッソの粉が正確にプレスできているかを見ています。審査員が手元を至近距離からじーっと確認するため、緊張のあまり手が震えてうまく淹れられない出場者もいるのだとか!

プレゼンテーションって何だろう?

さて、審査員がチェックするプレゼンテーションですが、村田講師によると「出場者が自身の提供するドリンクについての説明」を意味しているのだそう。
具体的には、どのようなスペシャルティコーヒーを使っているか。なぜそのコーヒーを使いたかったのか。どのような工夫をしてどのような味にしているか、そのドリンクをどのように感じてほしいかを、審査員に向けて魅力たっぷりにプレゼンテーションしていくのです。

スペシャルティコーヒーには多種多様に存在するため、説明がなければ美味しさがわかりにくいという側面もあります。もちろん、単に話術が流ちょうであるとか、味わいがおいしいというだけで高得点が得られるわけではありません。審査員が味わったときに、本当にその説明の通りに感じられるか、その正確性も求められるのです。

審査員を唸らせる「スゴ腕のバリスタ」ってどんな人?

審査員が特に優秀だと思う出場者は「顧客に高品質なサービスを提供でき、かつスペシャルティコーヒーを伝えられる人」…と村田講師。

4人並んだ審査員の前で出場者がプレゼンテーションを行うとき、まるでお店の中にいるかのような、居心地のよい空間を演出できること。審査員全員にまんべんなく目線を合わせることができ、伝えたいことをわかりやすく明確に話せること。そして、スペシャルティコーヒーを通じてひらめきを与え、感動を伝えられる“真のコーヒー伝道者”であることも重要なのです。

通常160名ほどが出場できる

コロナ禍では募集人数を100名程度に制限したものの、通常は予選で150~160名。16名が準決勝に進み、決勝に残った6名で1名のチャンピオンを決めます。この優勝者だけが、SCAが主催する「ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(WBC)」への日本代表として挑戦することができます。

競技で必要となるスペシャルティコーヒーの豆は、1キロあたり数万円になることも。それだけでなく、手に入れた豆の品質や焙煎の管理、連日の練習時間の確保なども必要になるため、いろいろな面でのサポートが期待できる企業や大きな店舗から出場する人も。少なくとも、エスプレッソを抽出できる環境下で働いている状況がベターであるとは言えそうです。

<チャンピオンになったら?> 優勝者はバリスタの憧れの的!

国内でナンバーワンになるには、約160倍の競争率を勝ち抜かなければなりません。その出場者1人ひとりが、日頃からチャンピオンになるためにたくさんの時間を使って技術を磨き、品質の高い豆を操ることができるレベルの高いプレーヤーです。
彼らの頂点に立つということは、バリスタのトップオブトップ。もし世界大会のファイナリストになれば、もはや神の領域とも言えるレベルに達した実力者とみなされます。
なので、予選を勝ち抜き、準決勝に出場するだけでも大変なこと。業界では決勝に進むと名が知れ渡り、一目置かれる有名人に。

日本大会のその先に…世界各地の競技会

「ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(WBC)」だけでなく、サイフォンにも世界大会があり、他にもラテアートの大会や、変わったところだとトルココーヒーの世界大会もあるんですよ。いくつかご紹介します。

ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(WBC)

毎年開かれる国際的な競技会です。世界各地の大会で勝ち抜いた50人以上のバリスタチャンピオンが集結し、世界一を決めます。出場者は、制限時間の中で12杯のドリンクを作成。味だけではなく、技術、創造性、プレゼンテーションなどあらゆる面で総合的に評価されます。

ワールドブリュワーズカップ(WBC)

手作業で淹れる「ハンドドリップ」の国際競技会です。ペーパードリップをはじめ、エアロプレスやフレンチプレスなどの器具から選択し、抽出技術を競います。
バリエーション豊かな器具による味わいの違いに加えて、競技者の創意工夫や個性なども垣間見える大会です。

ワールド・ラテアート・チャンピオンシップ(WLAC)

エスプレッソに滑らかなフォームドミルクを注ぎ、ホイップミルクとスチームミルクを加えた「カプチーノ」の泡に、絵柄や紋様を描く「ラテアート」。
カップの中に表現された芸術性や、複雑さなどに加え、プロとしての「サービス」や「衛生管理」なども審査のポイントとなる国際競技会です。

ジェズヴェ/イブリック チャンピオンシップ(CIC)

イブリック(ジェズべ)とは、中東や北アフリカで使われている、トルコ式コーヒーのためのコーヒー器材のこと。競技者は、自身のパフォーマンスでトルコ式コーヒーの文化や伝統をいかに紹介するかを競います。
トルコ式コーヒーについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。

今年は「SCAJ」でコーヒー市場の熱気を体感してみませんか?

「コーヒー」と言っても、これだけバリエーション豊かな各種大会が開催されていることや、競技会が増えきたことからも、コーヒーの可能性がまだまだ広がり続けていることを感じます。

今回ご紹介した国内大会は、コーヒーに特化したイベントとして開催されるアジア最大の国際見本市『SCAJ』の会場で、一般の方が観覧できるものもあります。場内で目の当たりにすると、ステージから競技者たちの熱気が伝わってきて、観ている側も思わず力が入ってしまうほどにエキサイティング!

『SCAJ』2022年のテーマは、“Come Join the Specialty Coffee Community”。10月12日(水)~14日(金)に、東京ビッグサイトで開催されます。UCCも入口付近にブース出展しますので、興味のある方はぜひ会場へ足を運んでみてくださいね。

SCAJとは|SCAJ2022: WORLD SPECIALTY COFFEE CONFERENCE AND EXHIBITION (scajconference.jp)

今回おしえてくれたのは・・・

村田果穂 Miho Murata
 UCCコーヒーアドバイザー
 ジャパン ブリューワーズカップ 2014/2015 準優勝
 COE(カップオブエクセレンス)国際審査員、SCAJ主催抽出競技会 各種認定審査員
2004年入社。コーヒーのスペシャリストとして、UCCコーヒーアカデミーでの講師や、コーヒーの買い付け、製品開発も担当。2020年11月からはYoutubeコンテンツ「UCCコーヒーアカデミー」でMCとして活躍中。 
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