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「研究者として“コーヒー体験”を提供するのが仕事」
神戸のUCCイノベーションセンターで研究されているのはコーヒーの味や成分だけにとどまりません。R&D本部に在籍する半澤が研究対象としているのは、「コーヒーとは一体何か」という実に幅広い世界。さまざまな研究テーマや解決課題を見つけ出し、時には研究領域を自在に横断しながらUCCの製品開発に繋げていくのが半澤の仕事です。
「UCCの研究者として大事なことは何か」と聞かれれば、コーヒーの味や香りのもととなる成分を分析することも欠かせないのですが、それに留まらず「お客さまに提供する“コーヒー体験”」のすべてを研究対象とすることだと考えています。
コーヒーにまつわる“体験”というのは本当に人それぞれですよね。コーヒーをどこで飲むのか、誰と飲むのか、どんなカップで飲むのか、どんな音楽を聴きながら飲んでいるのか……。そのすべてが人が感じる「コーヒーのおいしさ」に影響する可能性があります。
私の現在の研究内容を全部お教えするとすごく時間がかかってしまうのですが(笑)、人が感覚的に感じるものをデータ化して、製品開発に繋げるのも私の仕事のひとつです。
たとえば、マグカップの形状や材質、重さによっても人が感じるコーヒーの味は変わるといった研究報告もあります。私が実際にやってみた実験でもカップの重さや高さによって同じ豆のコーヒーを飲んでも別のコーヒーのように感じるという結果が得られました。
そういった人それぞれの感覚も、官能評価実験によって数値化されて、客観的なデータとして浮かび上がってきます。
研究対象が多岐にわたる半澤はUCCイノベーションセンターで働く研究者の中でもすこし異色の存在かもしれません。そんな半澤自身が「研究者として大きな分水嶺になった」と語るのは、2016年の「フードマッチングシステム」(※)の開発でした。
(※)株式会社味香り戦略研究所と共同研究をもとに、熟練のコーヒー鑑定士の舌を再現した味覚センサを用いてコーヒーと食べ物の相性を分析するUCC独自のシステムを開発(特許第6475174号)。
特許を取った「フードマッチングシステム」
「フードマッチングシステム」は簡単に説明すると、コーヒーと食べ物の組み合わせの相性を分析して、その結果をデータとしてわかりやすく「見える化」したシステムです。
たとえば、チョコレートケーキとはどんなコーヒーが合うのか、焼き鮭などの和食に合うのはどんなコーヒーなのか。システム開発以前は感覚に頼っていたのですが、これらを体系化し、味覚センサーによって分析する方法を開発したことでコーヒーと食べ物のマッチングが一目瞭然になった。
それまで誰もやったことがないことでしたので、不安もあったのですが、キックオフからわずか半年で発表に漕ぎつけられたのと、研究所発信のプロジェクトの成果を世に出せたことが大きな自信につながりました。
また、食べ物との組み合わせが誰にでもわかるようになったことで、飲食店のメニューに合うコーヒーを提案できるようにもなりましたし、現在では社内のさまざまなプロモーションにも積極的に利用してもらっています。なによりその中で社内のたくさんの人と知り合い、一緒に仕事をする機会を持てたことで、仕事が楽しくなってきました。
学生時代から好きなコーヒーを極めたかった
食品化学を学んでいた学生時代からコーヒーが好きだったという半澤ですが、趣味でコーヒーの味比べをするようになり、地元・宮城県では80店舗以上のカフェを巡ったと言います。
当時は本当にただのコーヒー好きとして楽しんでいただけですが。大学院を出て、いざ就職となったときに、「コーヒーなら一生好きでいられそう。大学で学んだことも活かして、研究職としてコーヒーを研究できる会社を探そう」と考えました。
学生なりにいろんな会社を調べた結果、UCCで取り組んでいる研究の内容が「楽しそうだな」と感じ、あこがれだけで、今の仕事に就いたという経緯になります。
「食」の研究者として
「好き」や「楽しそう」という気持ちで飛び込んだ世界ではありましたが、実際に働いてみると、当たり前ではありますが最初に考えていた以上に奥深い仕事だということに気づかされました。
これまでも、レギュラーコーヒーの嗜好品開発や缶コーヒーやエスプレッソの技術開発の部署にいたのですが、様々な先輩や、特に最初の配属になったチームの上司から強く影響を受けまして。
その上司の方からは「プロなら、1日中、コーヒーのことを考えていないといけない」と言われ、「自分もお客さまを裏切らない、プロの仕事をしよう」と考えるようになりました。
研究者としての今後の目標は、味や香りといった「コーヒーの中身」だけでなく、もっとコーヒーをおいしくするための「コーヒーの周りのこと」を研究してみたいと思っています。
たとえば、コーヒーを飲む環境によって人の味覚はどう変化するのか、とか。先ほど、カップの形でも感じる味は変わると言いましたが、飲んでいる部屋の温度や湿度、もしかしたら流れている音楽など周囲の環境によっても「コーヒーのおいしさ」は変わるはずなんです。
コーヒーは嗜好品です。メーカーとしてはお客さまの手にわたるまでで仕事は終わるのかもしれませんが、コーヒー好きな研究者としてはより多くの人にコーヒーを飲むという“体験”そのものを深めて欲しいんです。おこがましいかもしれませんが、コーヒー文化の裾野をもっともっと広げたい。
そのためには、もっと社内のいろんなセクションから困りごとについて何でも相談を受けたいですし、ずっと夢を語れる研究者でありたいと思っています。
心に残る、最高のコーヒーは?
「大学を卒業したのが2011年の3月UCCへの入社を控えていた春に東日本大震災が起きまして、あの時、電気が復旧した直後にお湯を沸かして飲んだコーヒーの味が忘れられません。豆の種類までは覚えていないのですが、ひと口飲んで、すごくホッとしたのを今でも思い出します。ただの一杯のコーヒーが忘れられない“体験”を生むことがあるのだと、その時のことは自分の中でも大切な経験として残っています」。
愛用のコーヒーグッズは
自宅でコーヒーを飲む時の愛用グッズ。
「初任給で購入したドリップポットは、馴染みの仙台の喫茶店の店長にすすめられたもの。家ではいつもこれでコーヒーを淹れています。マグカップはいろいろ集めているのですが、ファイヤーキングは自宅で40個ほど保有しています。最近お土産でもらったホーロー製のカップは、カップの絵に描かれている人も美味しそうにコーヒーを飲んでおり、今のお気に入りです」。
タンブラーに巻く革のスリーブはなんと自作。「UCC INNOVATION CENTER」の刻印も打ってある自慢の品。
R&D本部 半澤拓(はんざわ たく) 2011年入社。レギュラーコーヒーの嗜好品開発や、缶コーヒーやエスプレッソの技術開発を担当する中で、2016年に「フードマッチングシステム」を開発し、特許を取得(特許6475174号)。そのほか自らが関わった案件で取得特許多数。UCCコーヒーアドバイザー。 (部署名・役職は取材当時の情報です)
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