▲ 小坂 朋代(写真中央)/出原 太智(写真左)/浅岡 那月(写真右)
「一杯のコーヒーができるまで」…そこにはUCCのコーヒークリエイターたちの「おいしい事実」があります。
“飲まないコーヒー”「YOINED(ヨインド)」は、2023年10月末に情報が解禁されると、販売開始のわずか5日後には販売目標を達成。UCCの公式オンラインストアでは、その後も予約販売を承るたびに即日完売を繰り返した。飲まずに食べることでコーヒーの香りの余韻を余すことなく味わえるという、これまでの常識を覆す新しいカテゴリーの製品として、2024年度も販売前から大きな注目を集めている。
そんな「YOINED」の開発チームの面々が目指す新しいコーヒーの可能性とは?「YOINED」のプロジェクトリーダーの小坂、主に製品開発を行った浅岡、包装資材の開発を担当した出原に話を聞いた。
INDEX
20年来の研究成果をどうやってカタチにするのか… コーヒーの新しい価値を探る中で生まれた世界初の製品「YOINED」
小坂:“コーヒーを飲む”のではなく、“コーヒーを食べる”。「YOINED」は、その名前が示すように、コーヒーを食べることでその香りの「余韻」を楽しむというまったく新しいカテゴリーの製品です。
「コーヒーをもっと細かく粉砕できるのか?」そして「全部食べることができないか?同時に香りを保持できないか?」UCCが20年もの前から抱えていた課題でした。それは、コーヒー豆をマイナス196℃で凍結させて粉砕し、油脂でコーティングすることで香りも保持することができるという工程の開発につながります。
この製法はUCCが独自に特許を取っているものですが、「この技術を使って新しい製品を作ろう」というプロジェクトが発足したのが2022年末のことでした。
入社して3年目だった私は「楽しそう! やります!」と軽い気持ちで引き受けてしまったのですが(笑)、「YOINED」開発には大きな苦労が伴いました。
どんな製品を作ればいいのか。作るべきなのか。この固形のコーヒーの価値とは?
プロダクトアウトの商品だからこそ、もっと技術を掘り下げて、研究員がどんなことを考えてこの形にたどり着いたかを詳細にヒアリング、そこにマーケティングのヒントがあるかもしれないと考え、研究員も商品コンセプトから一緒に考える部署横断型の体制を考えました。
結果的には、私が中途採用で、コーヒーに対する固定概念がそれほどなかったのもよかったのかもしれません。でも、最初から一貫してこだわっていたのは、「YOINED」を普通のお菓子にはしたくないということでした。
試作品を最初に食べたとき、コーヒーの香りが口の中で広がって、まるで爆発するような感じがしたんです。
食感はチョコレートにも似ているけれど、初めて口にする食べ物でした。ですから食品表示も「菓子」ではなく、「コーヒー食品」としました。
製品化できたのはプロジェクト発足から1年後。小坂は「とにかく前例がないので、売れるかどうかも分からなかった」と言う。だが、発売後には生産が追いつかないほど大きな反響を呼んだ。
各方面から成功の理由を聞かれて感じるのは、とにかく、開発チームとプロジェクトに関わっていただいた方々全員の努力と熱意の賜物だということです。私自身、「YOINED」の開発を通じて、コーヒーの価値について多くの気づきを得られましたし、コーヒーがまだまだいろいろな可能性を秘めていることも学べました。
たくさんのお客さまから、「まだ買えますか?」とお問い合わせをいただいたので、待ってくださっている方に届けることができてうれしいです。
コーヒー本来のさまざまな可能性を内包する“飲まないコーヒー”
浅岡:私が所属するUCCイノベーションセンターの研究開発部では、20年に渡り、「YOINED」開発の元になる技術を培ってきました。
コーヒー豆を細かく粉砕すると表面積が大きくなり、保存の過程で風味が失われていきますが、約20マイクロメートル(0.02ミリ)という微細な粉末にしても、天然由来の植物油脂で固めることでその香りが逃げない。さらに口に入れた瞬間に体温で溶け、コーヒーの香りが瞬く間に広がるのです。
私が開発チームに加わった時点ですでにこの技術は確立されていて、特許も取っていましたが、製品化に当たってはラボで試作を繰り返し、工場の実機で製造できるようにすることが私の仕事でした。
実際、ラボではうまくいくのに、実機だとうまくいかないということが何度もありました。
味覚を決定するための官能評価も私が担当しました。何しろはじめてのカテゴリなので評価の結果が分かれることも多く、開発は手探りの状態で進んでいきました。
私は2021年入社なので、初めての製品開発だったのですが、「研究者としてどう思うか」と意見を求められることも多く、部署を超えて、製品をゼロから作って研究発信していく過程にはとてもやりがいを感じました。
あと、開発の過程で分かったことがあります。実は「YOINED」はコーヒーを液体で飲むよりカフェインが少なく、普通は抽出過程で失われてしまう食物繊維がそのまま含まれているなど、コーヒー本来が持つ可能性を持っているのです。
こうしたコーヒーの機能性を詰め込んでいるのも「YOINED」が持っている新しさのひとつかなと思います。
発売後は予想を上回る売れ行きで浅岡たち開発メンバーの気分も高揚したが、「工場で作るとすぐに売れてしまうので、私たちもしばらく本物の『YOINED』を食べられなかったのが残念でした(笑)」。
まったく新しいカテゴリーの製品をすべてのお客さまにおいしく届けるために
出原:「いったい何なんだ!?」というのが、「YOINED」のプロジェクトの内容を聞かされたときの私の印象です。「コーヒーを食べるってどういうことだ?」と。
試作品ができる前はチョコレートの包装をひとつのベンチマークとして考えていたのですが、実際に食べてみると「YOINED」はチョコじゃない。お菓子メーカーさんが作っているものを流用するだけでは、肝心なコーヒーの香りが飛んでしまうんです。
お客さまに一番おいしい状態で届けるためにはどうすればいいのか。
一般的なコーヒーのパッケージは、コーヒー豆から発生する炭酸ガスを放出し、外気や酸素の侵入を防ぐバルブが付くなどの特徴がある。だが、コーヒー用のパッケージとは大きさも違うので、出原は協力企業と何度も話し合いを重ねた。
香りを封じ込めるために選び抜いたフィルムも扱いが難しく、実機で包装してみると、ロスが多かったり、折れ跡がついてしまったりして、うまくいかないことも多くありました。
ですから、製造現場には何度も立ち会わさせていただき、時には1日がかりで現場の方と課題解決に取り組みました。
どんなものを包むのかによって包装の設計要件は変わります。
「YOINED」はどんな特徴を持っているのか。賞味期限はどのくらいに設定するのか。
おいしく味わうための包装資材の改良を重ね、官能評価も浅岡ら研究開発部と一緒に行って、ローンチのぎりぎりまで粘って妥協はしませんでした。最終的に資材が決定したのは資材発注日ギリギリでした。この「YOINED」の開発過程において、コーヒーが本来持っている力をさらに広げることに貢献できたように感じています。
ぜひ「YOINED」でコーヒーの新しい魅力を発見してほしい
まだ召し上がっていないお客さまには、飲むコーヒーではなかなか味わえない「YOINED」ならではの「初体験」にトライしてもらいたい。そして、ぜひいい意味で裏切られてほしいと思っています。
パッケージデザインを一新した今年も2種類の味を用意しています。カフェラテのような甘さを感じる「メローブラウン」とコーヒー豆23粒分を1枚に凝縮した「クレイジーブラック」。豆は昨年はエチオピアのナチュラルを使用していましたが、今年はタンザニア産を使うことで、豊かな酸味と豆本来のフルーティーな甘さが特徴的な製品になっています。
今年の「YOINED」はお酒のおつまみとして新たな訴求をします。飲まないコーヒー、そして食べるスタイルだからこそ叶う「おつまみ」としてのコーヒーもぜひ楽しんでいただきたい。意外だとおもいますが、日本酒や梅酒にもよく合います。
私たちのパーパスの一部に「コーヒーの可能性を解き放つ」とありますが、まさにこれを具現化した技術。創業90年のアニバーサリーイヤーに新たな歴史を刻むことができて、プロジェクトのひとりひとりとても誇らしい気持ちです。
「YOINED」をさらに進化させていきたい、もっと香りを強くできないか、どんなマリアージュで味わうか、究極の余韻に浸るシーンとは」・・・前例のないカテゴリだからこそ、お客様と一緒につくりあげていきたいです。さまざまな感想が聞けることを楽しみにしてます。
心に残る、最高のコーヒーと愛用のコーヒーグッズは?
昨日飲んだ「コロンビア エル・ディビソ・オンブリゴン」。UCCの社員は(本当にどの部署でも)コーヒーに対して熱い情熱と探究心を持っていますが、昨日、オフィスで営業社員に淹れてもらったコーヒーも最高の一杯でした。UCCで働いていると、「過去イチでおいしい!」と思うコーヒーが日々更新されていくような感じです。
「DRIP POD」はおいしいコーヒーが安定的に飲めるのが気に入っています。私のようなコーヒーのプロじゃない人でも美味しいコーヒーを淹れてくれますし、子どもはいつもこれで自分でほうじ茶を淹れて飲んでいます。子どもも安全に使えるので親としても安心です。
UCCジャパン株式会社
サステナビリティ経営推進本部 EC推進室
小坂朋代(こさか ともよ)
前職でジュエリー関係のPRや広報、デジタルマーケティングを経験した後、2020年、UCC上島珈琲株式会社に入社。EC部門を担当。2022年末に「YOINED」の製品開発が始まるタイミングでプロジェクトマネージャーを務める。
(部署名・役職は取材当時の情報です)
バイト中に飲んだまかないのアイスコーヒー。仕事で疲れた時に飲んだアイスコーヒーがとてもすっきりとした味わいでおいしく感じ、コーヒーには気持ちをリフレッシュさせる力があるんだと実感しました。
愛用品はコーヒー好きな父が毎朝コーヒー淹れる際に使っていたハリオのミルです。これは私が結婚して実家から出る時に渡してくれたもの。父がずっと使っていたものなので古いミルですが、これからも大切に使っていきたいと思います。
UCC上島珈琲株式会社
R&D本部 研究開発部
浅岡 那月(あさおか なつき)
2021年入社後、「& Healthy」の開発チームに所属。コーヒーの成分や機能性を調べたり、味や香りの官能評価を行う。「YOINED」の開発に当たっては、プロジェクトが立ち上がった直後より参加。
(部署名・役職は取材当時の情報です)
毎日飲んでいた甘〜いカフェオレ。子供の頃、祖母と一緒に暮らしていたのですが、毎朝淹れてくれていたカフェオレがすごく甘かったんですけど思い出に残っています。
2023年、スペイン出張の時にログローニョという街で買ったタンブラー。私は、UCCに入社する際に「世界を視野に入れた研究がしたい」と思っていたので、家でこのタンブラーを見るたびに当時の気持ちを思い出して気を引き締めています。
UCC上島珈琲株式会社
R&D本部 容器・資材開発部
出原太智(いづはら たいち)
2020年に入社。富士、滋賀工場で現場研修をした後、神戸のUCCイノベーションセンターに異動。2021年より現職。嗜好品や飲料製品の包装の改良や開発に携わる。「YOINED」のパッケージ開発に当たっては、浅岡と同じく、プロジェクトが立ち上がった直後より参加。
(部署名・役職は取材当時の情報です)
「YOINED」は10月22日より予約受付中!
「YOINED」は、10月22日(火)より、UCCグループの直営店舗、UCCグループの公式通販サイトにて予約受付を開始しました。数量限定、なくなり次第終了となりますので、ぜひお早めにお求めください。
販売期間
2024年11月1日(金)~2025年4月15 日(火)予定
販売場所
実店舗
UCCグループの直営店舗(21店舗)にて販売いたします。
■UCCカフェメルカード(11店舗)
札幌大丸店新宿髙島屋、そごう横浜店、そごう大宮店、そごう千葉店、JR京都伊勢丹店、大丸神戸店、そごう広島店、いよてつ髙島屋店、博多大丸店、熊本鶴屋店
■COFFEE STYLE UCC(3店舗)
グランスタ東京店、横浜店、アトレ吉祥寺店
■上島珈琲店(7店舗)
札幌アピア店、COREDO日本橋店、麻布十番店、黒田記念館店、神楽坂店、京都嵯峨嵐山店、阪急三番街店
通販サイト
UCCグループの公式通販サイト(3サイト)にて販売いたします。
■UCC公式オンラインストア
■COFFEE STYLE UCCオンラインショップ
■UCCドリップポッド公式オンラインストア(※)
※ドリップポッドカプセルとのセット販売(『YOINED』とコーヒーのマリアージュ提案になります)
販売価格等、詳しくは、「YOINED」のブランドサイトをご覧ください。
「YOINED」ブランドサイトへ