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コーヒーミルがあれば、コーヒーライフがもっと豊かに
ミルでコーヒーを挽くってなんとなくかっこいいですね。でも雰囲気だけではなく、現実的なメリットもたくさんあるようです。さっそく今田さんに教えてもらいましょう!
Q. コーヒー豆をミルで挽くと、どんな良いことがあるのですか?
A. 淹れたいコーヒーによって粒度(粉の大きさ、挽き目)を変えることができ、挽くというプロセスを楽しめるのも魅力ですが、大きなメリットは「豊かな香りを感じられる」ことです。
実は、コーヒーの香りの60%が挽いた時に放出されるんです。焙煎されたコーヒー豆を顕微鏡で見ると、焙煎時に熱が加わって膨張することによって孔(あな)があいた状態になっています。そこには香りの成分を含むオイル、炭酸ガスなどが入っているので、豆を挽いた瞬間、その孔が壊れることで、中の成分が一気に表に出てくるため、香りを最も堪能できるというわけです。これを感じられるのはミルを使う人の特権ですね。
Q. 粉で買ったコーヒーと、何が違うのでしょう?
A. 挽いてある粉よりも豆の方がより香りを保ちやすいというのが、一番の違いですね。
UCCでは、豆を挽いたときに出る香りを閉じ込める特別な方法でパッキングしているので、粉で買っていただいても開けたてであれば、挽きたてに近い香りが楽しめます。
でも一度開封すると、豆を挽いたときに放出された香りはその瞬間に外に出てしまうので、その後は保存経過に伴って少しずつ違いが出てきます。
Q. 豆と粉、鮮度の維持の点で違いはありますか?
A. おいしく飲める期間としておすすめできるのは、豆の状態だと1ヶ月程度、粉の状態では1週間程度です。豆は粉になると空気に触れる面がより多くなり、酸化が早まってしまうんです。豆も淹れる直前に必要な分だけ挽き、あとは豆の状態のまま保管しておくことで、酸化を抑え、おいしさもキープできます。
ドリップするときにコーヒーがぷくっと膨らむ時がありますよね。ミルで都度豆を挽いている人ならば、良く見る光景かなと思います。あれはコーヒーの粉の中の炭酸ガスがお湯に押し出されることで膨らむのですが、炭酸ガスが多く残っているのは鮮度の証でもあるんです。
ただ浅炒りのコーヒー豆は鮮度がよくても膨らみにくいので、ぷくっとしなくてもがっかりしないでくださいね。
手動、電動、刃の違い…ミルにはたくさんの種類がある
インテリアのようにおしゃれ感も演出してくれるミル。年々進化して、今はさまざまなタイプのミルが登場しています。
Q. 手動ミルと電動ミルの違いについて教えてください。
A. 手動と電動の一番の違いは「楽かどうか」だと思います。
手動ミルは、手でハンドルを回すことで刃を回転させ、豆を挽きます。種類によっては力やコツが必要で、粒度も揃いにくいですが、一般的に電動よりは安いものが多く、音も静かです。
電動は、豆をセットしてスイッチを入れるだけで挽くことができます。音が出てしまいますが、粒度が揃いやすく、何より楽に速く挽くことができるので、一度に挽く量が多い場合は電動が便利かと思います。でも最近は、家庭用サイズの電動ミルで1杯分毎に挽ける「シングルドーズグラインダー」なども出てきていますよ。
Q. 刃の種類にはどんなものがあるのですか?
A. 質問が専門的になってきましたね!これがまたなかなかややこしいのですが、ひとつひとつ説明していきましょう。プロペラ式、コーン式/コニカル式、フラット式に分けて説明します。
プロペラ式
いわゆるフードカッターです。比較的安価で、中細くらいまでなら挽くことができますが、極細までは難しく、また粒の大きさは不揃いになりがちです。
コーン式・コニカル式
「コーン式」は従来の手動ミルに多いタイプで、極細まで挽けます。セラミックや金属の、あまり鋭利ではない刃が上下についていて、すりつぶすようにして挽くので「臼式」とも言います。この刃のパーツが円錐の形をしているので「コーン(円錐)式」と呼ばれているんですね。
「コニカル式」と呼ばれるものもあります。「コニカル」は「円錐形の」という意味で、刃の形は円錐でコーン式とほぼ同じですが、コーン式よりも鋭利な金属製のものが「コニカル式」と呼ばれます。すりつぶすというよりは、一度大きく砕いてから切り刻んでいくようなイメージで挽いていきます。
「コーン式」も「コニカル式」もどちらも刃が小さいので挽くスピードは遅めですが、そのぶん熱は発生しにくくなります。
くし刃式
尖った三角の刃を噛み合わせ、その隙間を調節することで挽き目を変えます。電動ミルに多く、UCCで使用している ラッキーコーヒーマシーンの「BONMAC(ボンマック)BM-570」※1、フジローヤルの「みるっこ」※2などはこのタイプです。細挽きから粗挽きまで挽けますが、とくに粒度が揃いやすいのは中細挽きです。
※1・※2 いずれもフラット刃でない標準タイプ
フラット式
「ディスク」と呼ばれることもありますが、厳密に言うと、くしもコーンもコニカルもディスクと言えるので、ここでは「フラット」という言い方で区別しましょう。「フラット式」は平たく鋭い刃をすりあわせて高速で切断するイメージです。電動タイプで使われる刃で、カリタの「ナイスカット」などはこのタイプです。
粒度が揃いやすく、挽くスピードは刃の直径と比例していて、大きいものは速く挽けるため、業務や競技会でもよく使われます。スピードが速い分、摩擦熱も起きやすく、その熱による影響が、味を大きく左右するとまではいきませんが、多少あるかもしれません。
Q. 「ミル」と「グラインダー」には何か違いがあるのですか?
A. 「ミル」は「グラインダー」とも呼ばれ、メーカーによって呼び方が違います。「ミル」にはオーソドックスなイメージ、「グラインダー」には現代的で高性能なイメージを持たれている方も多いかと思いますが、基本同じものです。
選び方のポイントは、ライフスタイルと淹れたいコーヒー
迷っている方、必見。自分にぴったりのミルの選び方をご紹介します。
Q. コーヒーミルを選ぶとき、何から考えればよいですか。
A. まずは、普段どのくらいの人数分を淹れるか、どんなコーヒーをよく飲むかによって、「手動か電動か」から決めてみてはいかがでしょうか。たとえば一度に挽く量が30gくらいまでなら、手動でよいと思います。持ち運びたい、挽くという行為を楽しみたい方にもおすすめです。でもある程度の量を挽く、頻繁に使う、エスプレッソが好きで細かく挽きたいなどという方には電動をおすすめします。
それからデザイン。手動、電動ともにレトロなものからスタイリッシュなものまでいろいろあるので、きっと好みの一台が見つかるはず。・・・とはいえ値段もポイントですよね。使用する目的によってかなり幅があるので、予算を決めて探すと絞りやすいかもしれません。
Q. 機能、使い心地という点ではどうでしょうか?
A. 手動の場合、「できるだけ安価でお手入れしやすいものを」求める方は、セラミック刃のものを、「少し高くてもよいから、切れ味や粒度、挽くときの安定感にこだわりたい」という方は、刃が鋭利で軸のぶれにくいものを選ぶと良いでしょう。
例えば、値段は高めですが「コマンダンテ」などように精度の高い手動ミルは選んで間違いないと思います。「コマンダンテ」はいろいろなバリエーションがあり、オプションパーツも豊富なので、自分好みの見た目にカスタマイズする楽しさもありますね。
(記事冒頭の画像は、今田講師のコマンダンテコレクションです。こちらの記事でも紹介しています!)
あとは持ち手の形状が自分の手に馴染むかどうかも確かめてみてください。今は、持ち手の長さや形に工夫がこらされ、あまり力を入れずに挽けるミルも増えてきています。
電動の場合は、音が気にならないか、またお手入れのしやすさもチェックしておきたいところです。UCCグループのラッキーコーヒーマシンの「ボンマック250」などは、電動のわりに比較的音も静かですよ。最近では、電動でも静音なものが増えてきているように思いますね。
Q. ミルは、手動か電動か悩む人におすすめのミルはありますか?
A. ハリオの「スマートG」というミルは、手動と電動2通りの使い方ができるミルです。
比較的コンパクトで、USBで充電もできるので持ち運びにもぴったり。アウトドアシーンなどでも活躍しそうなミルですね。これからもミルは時代とともにどんどん進化、多様化していきそうです。
Q. ミルはどんなところで選べばよいでしょうか?
A. 今は多くのミルがネットで買えますが、持ち心地、挽く時の音量などは実際に使ってみないとわからないので、やはり実物を見るのがベスト。
毎年秋に開催される「SCAJ(※)」のようなコーヒーの大きな展示会では、各国・各社のコーヒー器具が定番アイテムから最新のものまでずらっと並んでいます。ミルもたくさんあるので、足を運んでみる価値はありますよ。
また、電動ミルは家電量販店でも取り扱いが増えてきているので、行ってみてはいかがでしょうか。
ぜひさまざまなミルに出会って、比べてみてくださいね。
※2024年の「SCAJ」は10/9~12開催のためすでに終了しています
コーヒーの魅力を活かす挽き方を知ろう
ミルを手に入れたら、さっそく挽いてみたいですよね。めざすコーヒーに近づけるためにはどんな点に注意すればよいのかも聞いてみましょう。
Q. 粒度はどれくらいに設定すればよいのでしょうか?
A. コーヒーは粒度が粗いと成分が溶け出しにくいためできあがりの味は薄くなり、粒度が細いと濃くなるので、どんなコーヒーを飲みたいかによって変わってきます。わからない場合は、まずペーパードリップで一般的に使われる「中細挽き」から試してみましょう。
段階の数や調整の仕方はミルによって違うので説明書を読んで調節してみてほしいのですが、挽いたコーヒーの粒度を見た目でざっくり判断するなら「粗挽きはザラメくらい」「中細挽きはグラニュー糖くらい」「細挽きは上白糖くらい」を目安にしてみてくださいね。
また、メーカーが販売している粉のコーヒーはほとんどがペーパードリップに合わせた「中細挽き」程度になっているので、まずは市販品と見比べながら挽くとわかりやすいと思いますよ。
Q. コーヒー豆の種類によっても調整の仕方は変わるのですか?
A. 浅炒りは成分が抽出されにくく、深炒りは成分が抽出されやすいため、浅炒りは少し細かめ、深炒りは少し粗めで挽くのもおすすめです。
Q. 粒度を揃えるって難しそうですね。ほかに調整する方法はあるんでしょうか?
A. 一般の方にはちょっとハードルが高いかもしれませんが、実は挽いた後で粒度を揃える器具もあります。この「KRUVE Sifter(クルーヴ シフター)」などがそうです。コーヒーの抽出技術を競う大会などでは、選手が自分の味わいを追求するために使ったりしていますね。
ミルの掃除も、おいしいコーヒーを飲む秘訣
ミルの掃除は、ミルを長持ちさせるためにも、コーヒーをおいしく淹れるためにも大切なのだとか。お手入れについても聞いてみました。
Q. ミルって掃除はできるのですか? 機種によっては分解しにくいように見えますが…。
A. 掃除できますよ。可能であれば使うたびに毎回、が理想です。
ミルに残ったコーヒーの粉は時間がたつと酸化して、次に挽いたコーヒーの味に悪影響が出てしまうからです。分解が必要なミルも、慣れてしまえば簡単なので、毎回までは無理でも、ぜひマメにきれいにしてあげてください。
ちなみに掃除の方法や分解できる程度は、ミルによって違います。基本的なお手入れとしては、粉を挽いている刃の部分や粉が残った箇所の届く範囲を、竹串で刃にこびりついた粉をとったり、専用のミルブラシでしっかり落としてあげたりすると良いでしょう。
Q. お手入れ時の注意点ってありますか?
A. 掃除のために分解するタイプのものは、組み立てなおしたとき粒度の基準が少しずれてしまうことがあるので、挽き目を都度確認することをおすすめします。
また、部品が洗えるかどうかは説明書で確認し、洗っても良い部品以外は水滴などをつけないようにしましょう。
最近は静電気による微粉の付着を防止する目的で豆を湿らせるため、グラインダーに霧吹き用途のスプレーがついてくることもあるのですが、その場合のお手入れは、取扱説明書を確認してください。
大切にすれば、長いこと良き相棒になってくれるミル。お気に入りのコーヒーミルを迎えたら、コーヒー豆を選ぶのも楽しくなりそうです。ニーズに合ったものをじっくり選び、正しく使って、より豊かなコーヒーライフを楽しみましょう!
今回教えてくれたのは・・・
今田束 Tabane Imada
UCCコーヒーアカデミー講師
2006年入社UCCコーヒーアドバイザー。営業職として松本支店、長野支店、仙台支店などを歴任。2010年、営業部時代にUCCコーヒーアドバイザーの資格を取得。その後も、コーヒー抽出士、ブラジルコーヒー鑑定士、SCAJ認定コーヒーマイスター・フードコーディネーター3級など、次々に資格を取得。2021年より現職。
(部署名・役職は取材当時の情報です)
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