今回は、コーヒー抽出競技大会の日本チャンピオン・中井 千香子さんに、自宅でも実践しやすいハンドドリップのコツを教えていただきました。
特別なテクニックではなく、大切なのは、毎日のコーヒー時間に取り入れやすいちょっとしたポイント。揃えておきたい基本の器具から、約5分で実践できる8つのステップまで、順番にチェックしていきましょう。
INDEX
まずは必要な器具を揃えよう!
ハンドドリップを始めるために、まずは次のものを用意しましょう。

画像の左から順に
- スケール
- タイマー
- 細口ケトル or ドリップポット
- サーバー
- ドリッパー
- グラインダー(コーヒー豆を使う場合)
- コーヒー豆 or コーヒー粉
- メジャースプーン
- ペーパーフィルター
中井さんのワンポイント
必要なものがたくさんあるように見えますが、最初からすべて専用の器具を揃える必要はありません。まずは、スケール、ドリッパー、細口ケトルがあれば、ハンドドリップを十分楽しめます。
今回はサーバーを使いますが、マグカップに直接乗せられるドリッパーなら、サーバーがなくても大丈夫。細口ケトルやドリップポットがない場合は、普段使っているやかんの注ぎ口に取り付けて、お湯を細く注げるようにするアイテムを活用する方法もあります。

また、コーヒー豆から挽くのではなく、より手軽に始めたい方は、あらかじめ挽かれたコーヒー粉を使ってもOKです。
まずは手持ちの器具も上手に活用しながら、気軽にハンドドリップを始めてみてください。
約5分でできる!日本チャンピオン直伝 ハンドドリップ8ステップ
器具が揃ったら、いよいよハンドドリップに挑戦です。今回は1杯分のレシピをもとに、日本チャンピオン直伝の淹れ方のポイントを8つのステップでご紹介します。
◎STEP1 コーヒー豆を挽く
1杯分のコーヒー豆約12g程度を用意し、中細挽きを目安に挽きます。
※コーヒー粉を使用される方は、STEP2からスタートしてください。

中井さんのワンポイント
手挽きのグラインダーを使う場合は、なるべく一定のスピードでハンドルを回してみてください。挽くスピードを安定させることが、挽き目のばらつきを抑えるポイントです。
今回はバランスのいい味わいを目指せる中細挽きにしましたが、もう少しさっぱりと楽しみたいなら粗め、しっかりとした味わいが好みなら細かめにするなど、挽き目を変えて好みを探してみるのもハンドドリップの楽しみ方のひとつです。
◎STEP2 お湯を準備する
300ml程度の水を沸かし、抽出に使うお湯を92〜96℃程度にします。
また、抽出に入る前に、サーバーとドリッパーを重ねてお湯を注ぎ、あらかじめ温めておきます。

中井さんのワンポイント
沸騰直後の熱湯をそのまま使うと、苦味や雑味などが強く出て、狙った味わいにならないことがあるので、お湯の温度は大切なんです。
温度調節機能のある電気ケトルがなくても大丈夫。沸騰したお湯を別のドリップポットに移し替えれば、自然と92〜96℃程度に下がります。
また、ドリッパーやサーバーが冷たいままだと、抽出中のお湯やできあがったコーヒーの温度が下がりやすくなります。抽出前にお湯を通して、あらかじめ器具を温めておくといいですよ。
◎STEP3 ペーパーフィルターをセットする
ドリッパーのサイズに合ったペーパーフィルターを用意します。(今回は1〜2杯用を使用)
台形のペーパーフィルターの場合は、底の接着部分を折ったあと、側面の接着部分を反対方向へ折ってからドリッパーにセット。
ウェーブ型フィルターなど、折らずにセットするタイプはそのまま使用します。

中井さんのワンポイント
台形のペーパーフィルターは、底と側面の接着部分を互い違いに折ることで、ドリッパーにフィットしやすくなります。
フィルターがドリッパーから浮いていると、抽出中にフィルターの位置がずれたり、お湯の流れが安定しにくくなったりすることがあります。ドリッパーの形に沿わせて、きれいにセットしてからコーヒー粉を入れましょう。
◎STEP4 コーヒー粉をセットする
サーバーとドリッパーをスケールに乗せ、STEP1で挽いたコーヒー粉12gをセット。
粉を入れたら、ドリッパーをやさしく揺らし、表面が平らになるように整えます。

中井さんのワンポイント
コーヒー粉を入れた直後は表面が山のようになっているので、お湯が粉全体に行き渡りやすいよう、平らに整えましょう。

このとき、ドリッパーをトントンと強く叩くのは避けてください。コーヒー粉が詰まってお湯が抜けにくくなり、抽出に時間がかかることがあります。抽出時間が長くなると、苦味や渋味などが強く出ることもあるため、やさしく整えることが大切です。
◎STEP5 蒸らす
いよいよ抽出スタートです。
まずはコーヒー粉の中央から外側へ向かって、小さな渦を描くようにお湯20mlを注ぎ、粉全体を湿らせ「蒸らし」を行います。
お湯を注ぎ終えたらタイマーをスタートし、20秒待ちます。
「蒸らし」とは、いわゆる抽出前の準備運動です。コーヒーはスポンジや蜂の巣のような構造(多孔質)をしており、中にたくさんの小さな穴を持っています。
少量のお湯を全体に注いで蒸らすことで、内部の二酸化炭素(炭酸ガス)を放出し、お湯が通りやすい状態にして均一に抽出する準備を整えます。

中井さんのワンポイント
蒸らすときは、ペーパーフィルターへ直接お湯をかけないようにしましょう。
ペーパーフィルターへ直接お湯を注ぐと、コーヒー粉と十分に触れないままお湯が下へ流れやすくなります。粉全体を湿らせることを意識して、コーヒーの上にお湯を乗せるイメージで丁寧に注いでみてください。
◎STEP6 1回目の注湯
蒸らしが終わったら、1回目の注湯です。
コーヒー粉の中央で「一円玉」ほどの大きさの円を描くイメージで、できるだけ低い位置からゆっくり80mlのお湯を注ぎます。
蒸らしで注いだ20mlと合わせて、スケールの表示が100mlになればOKです。

中井さんのワンポイント
意識してほしいのは、一円玉くらいの円の大きさを保つこと。大きく回しすぎず、中央へゆっくりと一定の湯量で注いでみてください。
一定のペースを意識すると、円の大きさも安定させやすくなりますよ。
◎STEP7 2回目の注湯
ドリッパー内のお湯の量が3分の1程度まで減ってきたら、2回目のお湯を注ぎます。
ここでも中央付近に一円玉ほどの円を描きながら40ml注ぎ、スケールの表示を140mlにします。
このとき、ドリッパーの周囲にできたコーヒー粉の層(以下「堆積層」といいます)を崩さないようにしてください。

中井さんのワンポイント
中央付近へ小さな円を描くように注いでいると、周囲にはコーヒー粉の堆積層ができると思います。
中央だけに注いでいても、お湯はコーヒー粉の中全体を通りながら広がっているんです。狙っていない成分まで過度に抽出しないためにも、この堆積層をできるだけ崩さずに注いでいきましょう。
◎STEP8 3回目の注湯
中央のお湯が落ちて、表面が少しくぼんできたら最後の注湯です。
コーヒー粉の堆積層を崩さないよう、同じく一円玉ほどの円を描きながら20mlのお湯を注ぎます。
スケールの表示が合計160mlになったら完成です。

中井さんのワンポイント
抽出が終わったら、ドリッパーを見てみてください。コーヒー粉の表面に泡が少し残っていると思います。

この泡が残っている状態は、雑味につながる成分を必要以上に抽出せずに淹れられたかを見る、ひとつの目安です。すっきりとクリアな味わいに仕上がっていると思いますよ。
やってみるとこんなに違う!飲み比べてわかったハンドドリップの楽しさ
ここまで中井さんに教えてもらったポイントを実践すると、コーヒーの仕上がりはどのように変わるのでしょうか?
そこで、レクチャーを受ける前と後で、ハンドドリップ初心者が挑戦!
同じコーヒー豆、同じ器具を使い、抽出量も揃えて、淹れ方だけを変えて比べてみました。
レクチャー前後で、ドリップの様子に変化が
まずは、これまでに知っていたハンドドリップの知識だけでチャレンジ。
「蒸らし」はなんとなく知っていたものの、お湯をコーヒー粉全体に行き渡らせることまでは意識していませんでした。
さらに、1回に注ぐお湯の量や注ぐ位置もよくわからず、中央だけでなく全体に広く注いだり、ドリッパーいっぱいになるまで一気にお湯を注いだりしていました。

抽出後のドリッパーを見てみると、コーヒー粉の堆積層はできているものの、平たくなっていたり、場所によって厚みにばらつきがあったりと不均一。表面には、これまで中井さんが目安として教えてくれた泡もほとんど残っていませんでした。

一方、レクチャー後は、まず蒸らしのお湯をコーヒー粉全体に行き渡らせることを意識。すると、その後の注湯ではコーヒー粉がふっくらと膨らむ様子が見られました。

さらに、教わった湯量とタイミングを守りながら、一円玉ほどの円を描くように注いでいくと、ドリッパーの周囲にはきれいな堆積層が。抽出後には、コーヒー粉の表面に泡もほどよく残っています。

同じ豆と器具を使っていても、淹れ方を意識するだけで、抽出中の様子や抽出後のコーヒー粉にも違いが表れました。
飲んでみると違いを実感!レクチャー前後を比較
レクチャー前に淹れたコーヒーは、やや薄く、少し物足りない印象。さらに、渋味や好みではない酸味も感じられました。
一方、レクチャー後に淹れたコーヒーは、コクが感じられ、余韻も長く続く印象に。中井さんからも「すっきりとクリアな味わいになりましたね」というコメントをいただきました。
使ったのは、まったく同じコーヒー豆。それでも、蒸らし方やお湯を注ぐ量、タイミングなどを意識するだけで、ハンドドリップ初心者でも実感できるほど味わいに違いが生まれました。こうした変化を楽しめるのも、ハンドドリップのおもしろさのひとつですね。
ハンドドリップは「正解を目指す」より「変化を楽しむ」
中井さんに教えていただいたのは、特別なテクニックではなく、豆やお湯の量をはかる、蒸らし方や注ぐ位置を意識するといった、毎日のハンドドリップに取り入れやすいポイントばかり。
実際に飲み比べてみると、同じコーヒー豆でも、淹れ方によって感じる味わいに違いがあることがわかりました。

今回ご紹介した淹れ方をひとつの基準に、慣れてきたら挽き目やお湯の温度、注ぎ方などを少しずつ変えてみるのもおすすめです。「もう少しすっきりさせたい」「コクをしっかり楽しみたい」など、自分の好みに合わせて試してみると、新しい発見があるかもしれません。
正解を目指すだけでなく、淹れるたびに生まれる変化を楽しめるのも、ハンドドリップのおもしろさ。毎日の一杯を通して、ぜひ自分好みの淹れ方を見つけてみてください。
今回教えてくれたのは・・・

UCCコーヒーアカデミー講師
中井 千香子(なかい ちかこ)
2013年UCCグループ入社。店舗マネジメントを経験しながら抽出競技大会へ挑戦。UCCイノベーションセンターの研究員とともにコーヒーを科学的な視点から検証。その知見を抽出競技大会にも生かし、女性初となるブリューワーズ・サイフォン2部門の日本チャンピオンに輝く。世界大会ではサイフォン準優勝、ブリューワーズ第4位の実績を持つ世界トップクラスバリスタ。
2021年よりUCCコーヒーアカデミー神戸校、2025年より東京校の専任講師を務める。国内競技会での審査・ヘッドジャッジ経験も持ち、抽出技術を論理的に伝える講義や、味覚評価・ブレンド・ペアリングを得意とする。
(部署名・役職は取材当時の情報です)
監修:UCC COFFEE MAGAZINE編集部
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