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生産国としての基本情報
中米のコスタリカ共和国(以下、コスタリカ)は、北のニカラグア、南のパナマに接する国で、北東側にはカリブ海が、南西側に太平洋が広がっています。国名はスペイン語の「豊かな海岸」が語源となっており、スペイン語が公用語です。主な宗教はカトリックですが、信教の自由が保障されています。
約50万㎢の国土に、東京23区の人口の約半分に相当する約500万人が住んでいます。首都は、国のほぼ中央に位置するサンホセです。
教育や環境保護に力を入れているコスタリカ
政府は1948年に起きた内戦をきっかけに、翌49年に改憲を経て軍を廃止。その後、国家予算の多くを教育や医療にあて、力を注ぐようになりました。特に教育の分野では「兵士よりも多くの教師を」をスローガンに、義務教育を拡充。識字率98%という高い教育水準が特徴です。
環境保護にも積極的で、国土の1/4が国立公園や自然保護区に指定されています。豊かな自然の中で暮らす多種多様な生物をひと目見ようと、エコツーリズムを目的に諸外国から観光客が訪れています。加えて、国内の電力の90%以上を再生可能なエネルギーで賄っています。
ちなみに英国のシンクタンクが発表した「地球幸福度指数」(限られた環境資源を利用して、いかに効率的に幸せに過ごせるかを示した指標)では、過去に4度も1位を獲得。実は世界的な環境立国なのです。
主な輸出品目は、バナナやトロピカルフルーツ、コーヒーといった農産物のほか、医療器具、半導体デバイスなどです。政府が経済特区を整備したことで、アメリカのインテル社の工場誘致に成功。続いて多くの外国企業が進出し、国の経済成長に大きく寄与しました。
簡易式ネルを使った伝統的なコーヒーの飲み方「チョレアード」
簡易式ネルか、布を使ってコーヒーの粉をろ過する「チョレアード」が伝統的な飲み方です。朝ごはんは、このチョレアードで抽出したコーヒーと豆ごはん「ガジョピント」、目玉焼きが定番です。
現地のあいさつは「プラ・ビダ(Pura vida)」。英語で直訳すると“pure life” “simple life”という意味ですが、“ありがとう” “またね” “最高!” など日常の様々な場面で使われています。
コーヒーの歴史など
中央アメリカで、最初にコーヒーの木を栽培した国と言われています。18世紀ごろにコーヒーが伝わり、コーヒー産業が拡大。1848年の独立後は、経済的自立を目指して生産を拡大させていきました。
大量生産より品質を重視した結果、現在ではスペシャルティコーヒーにおいて、世界的に有名な産地として知られています。イメージ低下を避けるために、アラビカ種以外の栽培を法律で禁止している国は世界でもコスタリカのみです。
採れるコーヒーの特徴
主要産地のタラスが最も有名です。中でもタラス地区のドタ地域は味わいに特徴があるため、スペシャルティコーヒーの世界では有名な産地です。ウエストバレー、もしくはナランホも人気です。
各産地では、アラビカ種の「カトゥーラ」「カトゥアイ」や「ビジャサルチ」などが栽培されるとともに、コーヒーの木に直射日光が当たらないように日陰を作り、生育しやすい環境に整える「シェードツリー」を植えています。そのシェードツリーには、成長が早く短期間で刈り取りが可能なバナナ系がよく用いられています。
多くの農家が高品質なマイクロロット生産(※)に取り組んでおり、様々な品種やプロセスが毎年試されています。また品評会の入賞を通じて、新しい精製法「アナエロビックプロセス」を大々的に仕掛けたのもコスタリカです。
※「マイクロロット生産」とは
明確な定義があるわけではありませんが、ただ少量なだけではなく、栽培・収穫・加工・販売まで生産者の顔が見える生産体制のことを指す言葉です。収穫されたコーヒーは高品質なため、高値で取引されますが、生産コストもかかるため、生産量を増やすのは難しくなります。
コーヒー栽培に適した火山性土壌と標高800m超の栽培地
国内には大小合わせて100以上の火山があり、現在は活火山が5つあります。そして国土の中央に連なる複数の火山山脈を中心にコーヒー農園が広がっています。そのため農園はミネラルが豊富かつ水はけがよい火山性土壌で、大半の栽培地が標高800m超と、コーヒー栽培に適しています。なお太平洋側の産地のほうが、カリブ海側の産地よりも標高が高くなっています。
雨季は5月から11月、乾季は12月から4月。雨季の終盤にあたる10月から乾季の2月にかけて収穫が行われています。
味わい・等級
コーヒーの実は外側からおおまかに、果肉・粘液層・パーチメント(種を覆う殻)・種(生豆)が層になっています。
コーヒーの伝統的な精製方法には、果肉が付いたまま乾燥させる「ナチュラルプロセス」と、粘液層を大量の水で除去してパーチメントコーヒーの状態で乾燥させる「フリーウォッシュドプロセス」があり、コスタリカでは1990年代までフリーウォッシュドが主流でした。
しかし、2000年頃に水質保護法が施行されると、排水量削減を目的に、機械の力を借りて粘液層を取り除いてから乾燥させる「メカニカルウォッシュドプロセス」が開発され、普及していきました。
粘液層のことを英語で「ミューシレージ」と言いますが、ハチミツのようにトロっとしていることから、スペイン語ではハチミツを意味する「ミエル」と呼ばれていました。そのためコスタリカでは、機械の設定によってミエルの除去率を調整できる「メカニカルウォッシュドプロセス」のことを「ハニープロセス」と呼ぶようになりました。
ミエルを多く残すほど、濃く、ふくよかな甘みを感じやすくなるため、以下のように残量を変えることでバリエーションを細かく分類し、付加価値を高めています。
ハニープロセスのバリエーション (ミエルの除去割合) ブラックハニー :0% レッドハニー :~25% イエローハニー :50% ゴールデンハニー:75~85% ホワイトハニー :90%
豆の形状に差はないものの、プロセス由来で見た目に違いが生まれます。
ハニープロセスでは、ミエルを残す量によって、コーヒー豆の中央の縦筋「センターカット」や、豆表面の薄皮「シルバースキン」が薄い黄土色から褐色に色づきます。
品種、地域ごとの味わい
<品種による味わい>
主な栽培品種は、「カトゥーラ」「カトゥアイ」「ビジャサルチ」など。
ブルボン種の甘みや華やかさを受け継ぎつつ、メリハリのある酸味が出やすいのが特徴です。
<各地で栽培されるコーヒー豆の味わい>
■タラス
もぎたての柑橘系やベリーのような爽やかな酸味が出やすい
■ウエストバレー
完熟果実の果汁を舐めたような甘みが、とろみあるボディと絡む
等級は、標高によりSHB(ストリクトリー・ハード・ビーン)、HB(ハード・ビーン)に分けられます。他にも規格は存在しますが、取引されるレベルとしてはこの2規格がほとんどです。
農事調査室から「コスタリカでの調査研究が、新技術や新発想を生み出す大きな助けになっています」
コスタリカにおける農事調査室の活動は、他の多くの国々での支援活動と大きく異なり、その大半は純粋な調査研究に費やされ、インプットの要素が強くなっています。
ICAFE(コスタリカコーヒー協会)主導で進められている品種の開発や低炭素農業の研究、各地区に点在するマイクロミル(小規模精算処理施設)における精製工程や発酵工程の研究や成果をモニタリングする事が、我々の新しい技術や発想を生み出す大きな助けになっています。
中米の中でも金融立国として知られ、人々が豊かな生活を送っているコスタリカ。人件費も高く、その影響はコーヒーの単価を押し上げ、周りの国々との競争力を低下させてしまいました。その結果、大半のコーヒーは、高付加価値のスペシャルティに全振りされています!
UCC 農事調査室 主要原産地に出向き、コーヒーの栽培状況などを調査・研究しています。 担当 日比 真仁、中平 尚己、井上 隆裕
生産地ごとのコーヒーを味わってみたくなった方へ
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「UCCカフェメルカード」は、全国で22店舗(2023年1月現在)を展開しているUCCのコーヒー専門店です。お店のテーマは「MEET YOUR BEANS 私好みのコーヒーに出会う場所」。
UCC直営農園産のコーヒーや、コンテスト入賞ロット、産地・農園指定のコーヒー、UCCの知恵と技術を駆使して創作するブレンドコーヒーなど、良質で個性豊かなコーヒーを幅広く取り揃えています。
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