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コーヒーの香りをさす3つの言葉、「フレグランス」「アロマ」「フレーバー」
日々を幸せにするコーヒーの香りは、焙煎で引き出される
気分転換や集中力アップのためにコーヒーを淹れる人も多いと思いますが、コーヒーは香りだけでも何かの効果が期待できるのでしょうか。
香りをかぐだけでも、実際に飲んだときと同様、リラックス、覚醒、集中力のアップなどにつながるということが、実験で明らかにされているそうです。
コーヒーの香りが持つ個性は、どの段階で生まれるのですか。
コーヒーが育つ環境、品種、コーヒーチェリー(コーヒーの実)を収穫してから生豆(焙煎前のコーヒー豆)にするまでの工程によって、味や香りの個性が形成されます。
生豆の状態では青臭く、良い香りとはいえないものも多いですが、焙煎されることで皆さんが良い香りといわれるような香りができます。
そうして現れるコーヒーの香りの成分は、今確認されているだけでも800種類以上あるんですよ。
フレグランスの違い、アロマやフレーバーへの変化もコーヒーの醍醐味
コーヒーの香りは、豆の状態によって「フレグランス」「アロマ」「フレーバー」という3種類の呼び名があるそうですね。それぞれどう違うのでしょう。
「フレグランス」は乾いた状態の粉から感じる香り、「アロマ」は粉にお湯をさした時に感じる香りやコーヒーの液体そのものから感じる香り、「フレーバー」は飲むときに味と一緒に感じる鼻から抜ける香りです。
中でも強く感じられるのは豆を挽いたときの「フレグランス」です。豆を挽くことによって内部に含まれていた香り成分が一気に放出されます。また焙煎されることによってガスが発生します。ガスが香り成分と一緒に放出されることでより香りが強く感じられるんです。

たしかにコーヒー豆を挽くと、部屋に香りが広がって幸せになりますね。そして「ブラジル」「モカ」「マンデリン」などいくつか並べてフレグランスを比較してみると、個性の違いがよりはっきりわかります。
そうなんです。ご自宅では何種類ものコーヒーを同時に比べることはしにくいかもしれませんが、コーヒーアカデミーの「ベーシックコース」や「アドバンスドコース」ではいくつか嗅ぎ比べができるので、皆さんあらためてその違いに驚かれます。
フレグランスの個性からアロマやフレーバーがどんなものになるのかは予想できるのですか。
ある程度予想はつきますが、実は必ずしも似たものになるとは限らないんです。とくにスペシャルティコーヒーでは、フレグランスからは予想のつかなかったフレーバーに展開して私たちも驚かされることがあります。
「フレーバーホイール」で香りの表現を広げてみよう
この香り、なんて言えば…そんなときに!
でも香りを言葉にするのって難しいですね。「深炒りらしい香ばしさ」「華やかでフルーティー」くらいは言えても、それ以上となるとなんて言えばいいかわからなくなります。
まさにその助けになってくれるのが、SCA(スペシャルティコーヒー協会)の作った「フレーバーホイール」なんです。

「あ、この香り、知ってる気がするけれどどう表現したらいいんだろう」と思ったときなどに見ると良いのですね。
そうです。これを見ることによって「あ、チョコかも!」など、ご自身の記憶が呼び起こされて表現の幅が広がるので、画期的なツールだと思います。
「フルーティの中でもベリーなのか、シトラスなのか、ベリーならその中でもいちごなのかブルーベリーなのか」など、細分化して香りを明確に表現したり、表現できた時にどんなものに当てはまるのかを探ったりする手助けをしてくれます。
正解はない?!大切なのは感覚を深めて表現の幅を広げること
「フレーバーホイール」はコーヒーアカデミーでも、実際に使っているのですか。
コーヒーアカデミーでも様々なコーヒーをテイスティングする際に活用しています。
コーヒーは嗜好品だからこそ皆さんいろいろな表現を持たれていると思いますが、フレーバーホイールを活用することによって、世界中で飲まれているコーヒーを共通で認識できるようなツールとしてご紹介しています。
フレーバーホイールにある言葉で表現できることが理想ですが、最初はなかなか難しいので、セミナーでは「大切なのは合っているかどうかではなく、自分の感覚を深めて表現の幅を広げることなんですよ」とお伝えしています。
嗅覚を研ぎ澄ませるために生まれた「ル・ネ・デュ・カフェ」
36種類の香りを詰めた小瓶

もうひとつ、「ル・ネ・デュ・カフェ(Le Nez du Cafe)」という教材もあるのですね。木の箱にたくさんの小瓶が入っていて、香水のコレクションみたいですね。
「ル・ネ・デュ・カフェ 」はフレーバーホイールと同様にコーヒーの香りを共通認識として表現するためのキットの1つです。フランスのワイン鑑定家の人が、ワイン鑑定のキットをコーヒーに応用して開発したものだそうで、36種類の香りが小瓶に詰められ、4種類のカテゴリーに分かれて入っています。
「ル・ネ・デュ・カフェ」に入っている36種類の香り
Enzymatic:生豆由来の香り
じゃがいも、キュウリ、ティーローズ、レモン、等
Sugar Browing:焙煎の過程で生まれる香り
バニラ、フレッシュバター、トースト、キャラメル、等
Dry Distillation :揮発して鼻から抜けていく香り
シダー、クローブライク、胡椒、コリアンダーの種、等
Aromatic Taints :コーヒーには好ましくない久点を示す香り
土、藁、コーヒーパルプ、革、薬品、等
初心者のトレーニングにも、専門家の試験にも。
嗅いでみるととても面白いです! すぐにわかるものもあれば、答えを知って「あぁ、言われてみれば!」と思うものもありますね。高価なので個人で買うには勇気がいりますが、コーヒーアカデミーで体験できるのでしょうか。
コーヒーアカデミーの「アドバンスドコース(ベーシック終了者向け)」や、トピックを絞って深掘りしたい人向けに設けられた「スペシャリストコース」の「センサリー」という講座でご紹介しています。いくつかの香りを何も見ずに嗅いで、ご自身の感じたことをメモしていただき、「実はこの香りなんですよ」って種明かしをしながら解説していきます。これもまずは当てにいくことより、香りの印象を記憶と結びつけて感じ取れるようになることが大切です。

専門家の方はどのように活用しているのですか。
嗅覚を鍛えるため、あとは「Qグレーダー(現Evolved Q Grader)という資格試験 の練習として使っています。この資格はSCAの定めた基準に準じてコーヒーの評価ができる、またコーヒーのバリューチェーンの中でそれぞれの場面で適したコーヒーの価値を見出し、可視化し、提示するコーヒーの専門知識を持つ人が与えられるもので、その試験やトレーニングとして使用されることがあります。暗闇の中でランダムに香りが出されて、何の香りか、一致する2つの香りはどれとどれかを当てたりするのですが、似ている香りもあってなかなか難しいんですよ!
香りを意識することで、コーヒーライフをもっと豊かに
家で実践!コーヒーの香りの楽しみ方
コーヒーの香りのとりかたというのは、何かお作法があるのでしょうか。専門家の人たちは、コーヒーを比べたり評価したりするために、カッピングをしていますよね。
そうですね。カッピングとは、無臭の部屋で、まずグラスに粉をいれてフレグランスを感じます。次にそこにお湯を注ぎます。しばらくしてから上の層をくずしてアロマを感じ、さらにスプーンですくってすすってフレーバーを感じる、という段取りで確認していきます。音をさせて勢いよくすするのは、コーヒーの液体を霧状にして入れることで口の中で揮発させて鼻から抜ける香りをより感じるため、また舌全体にコーヒーを行き渡らせることで味わいをしっかり感じるためです。これは世界共通のテイスティング方法です。アカデミーの「ベーシックコース」や「アドバンスドコース」ではカッピングも体験していただけますよ。

一般の人が家庭でコーヒーの香りを楽しむには、まず何から始めたらよいでしょう。ミルを買って豆を挽こうか、迷っている方も多いと思いますが。
コーヒーは豆を挽いたときにもっとも強く香りがたちますし、味も香りも格別なので、フレグランスを楽しみたい方にはぜひおすすめしたいですね。私自身、アロマやフレーバーだけではなく、フレグランスの魅力を知ることで、コーヒーの楽しみ方が広がりました。
香りをより感じられる器具やカップの素材や形ってありますか?
お手軽なものだとドリッパーです。様々な形がありますし、材質や形によって違いが出るのでお試しいただければと思います。
抽出器具でいうとサイフォンもおすすめです。抽出中の香りが立ちますし、出来上がりの温度が高いことで湯気から香りがより揮発しやすいので、強く香りをキャッチすることができます。
カップも、デザインや持ち心地なども含めてご自身がおいしく感じられるものでよいと思いますが、広口のものよりは少しだけ狭いもの、ワイングラスのような形になっていると、香りをより楽しむことができますよ。
初心者でも実践できる飲み方のコツのようなものがあれば教えてください。家でもカフェでもできそうなこと、ありますか。
飲むときはいきなり飲むのではなくて、大きく深呼吸してから香りだけを楽しむ時間をとってみてください。
口に入れてからもコーヒーをすぐに飲みこんでしまうのではなく、口の中で味わいを感じる時間をとってみると、フレーバーをより繊細に楽しめると思います。
また細かいことですが、お家で抽出される際にはカップだけでなく器具も温めていただくことで、出来上がった時の香りの立ち方が違いますよ。
香りへの感覚は何歳になっても鍛えられる
嗅覚ってふだんあまり意識していないので、風邪を引いてはじめてその大事さに気づいたりしますよね。ふだんの生活の中で嗅覚を鍛える方法や、体調以外に気をつけたほうがいいことはありますか?
日々、何かを飲んだり食べたりしたときに意識的に記憶したり、「この味はフルーツに例えるなら○○っぽいかな」というように、言葉を探してアウトプットしたりということを重ねてみてください。トレーニングにもなりますし、香りの表現の幅が広がります。
あと香りを楽しむ直前の食事は、辛いもの、匂いの強いもの、味の濃いものなどは避けたほうが繊細に感知できると思います。専門家の中には、朝食を食べずに空腹状態で味覚を研ぎ澄ませておくという人もいますが、みなさんはそこまでストイックにならなくても大丈夫です!

香りへの感覚を鍛えるのに、年齢は関係あるのでしょうか。
どなたでもレベルアップすることは可能です。コーヒーアカデミーにも年齢、性別、職業問わずさまざまな方がいらっしゃいますが、みなさんそれぞれの発見や進化を楽しんでいますので、ぜひお気軽にいらしてください。
コーヒーの楽しみ方をますます魅力的にする「香り」。みなさまも豆を挽いたり、フレーバーホイールを眺めたりするところから香りにフォーカスしてみてはいかがでしょうか。
そしてもっと深めたい気持ちがわいてきたら、ぜひコーヒーアカデミーへ。趣味としてコーヒーを楽しみたい方から、将来の開業を目指す方まで、コーヒーに興味のあるすべての方に向けた多彩なセミナーをご用意してお待ちしています!
今回教えてくれたのは・・・

UCCコーヒーアカデミー専任講師
藤原 由 Yuu Fujiwara
UCCコーヒーアドバイザー
(アメリカ)CQI認定Qロブスタグレーダー
「豆から挽いたコーヒーは、香りも味わいも格別です。香りを通して新たなコーヒーの世界を体験していただければ幸いです。アカデミーにもぜひお気軽にお立ち寄りください!」
(部署名・役職名は取材当時の情報です)
「UCCコーヒーアカデミー」で会いましょう!
→ UCCコーヒーアカデミー のサイトへ
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