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今後のコーヒー価格の高騰は避けられないのでは
みなさんが家で飲んでいるコーヒーは、1杯あたりいくらか考えたことはありますか?毎日飲むのでコーヒーは切らさないよう購入している…という方も多いと思いますが、実は今コーヒー業界では、この先のコーヒーの価格高騰は避けられないのでは、と言われています。
それはなぜなのか、今後コーヒー業界が考えていくべきことはなにか、など、今回はちょっと踏み込んだ話になりますが、「コーヒーの価格」について、アカデミーの小山講師に聞きました。
コーヒーの取引価格はどう決まる?【品質/為替】
コーヒーは、コーヒーの木から採れたコーヒー豆を加工して作られています。海外で栽培される農作物を輸入して作られるので、市販されているコーヒーの価格を考える上では「コーヒー豆の取引原価を左右する要因」に目を向ける必要があります。
では、コーヒーの価格の変動には、どんな要因があるでしょう?
ポイントとなるのは、コーヒーが農作物であること、そして輸入品であることです。
農作物としての品質(品種×産地×精製×規格)
まずはコーヒーの農作物としての側面から。
例えばお米にも、「コシヒカリ」や「ササニシキ」などいろいろな品種がありますが、コーヒーにも「アラビカ種」と「カネフォラ(ロブスタ)種」という品種があります。栽培割合は「アラビカ種:カネフォラ種」で「6:4」くらい。「アラビカ種」は高地で栽培されることが多く、比較的高品質であることから「カネフォラ種」よりも高価に取引されます。
そしてお米もその品質によって値段が変わるように、コーヒー豆も各国で品質ごとに等級に区分けされていて、等級が高いほど、高価に取引されます。また、コーヒーチェリーからコーヒーを取り出す時の精製方法もコーヒーの価格に影響する要素です。
為替の影響
日本は、一部ではコーヒー栽培ができる地域もありますが、国内消費分のほとんどは輸入しています。その国際間取引の際に影響するのが為替です。
コーヒーはドルで買い付けしますので、当然、円安になると輸入品であるコーヒーの価格は高くなります。小麦やとうもろこしなどと同じように、コーヒーもまた為替の影響が価格に反映される作物なのです。
コーヒーの取引価格はどう決まる? 【需要と供給のバランス】
飲みたい人(需要)が増えて、供給量が足りなくなれば、当然価格は高騰することになります。これまであまりコーヒーを日常的に飲用していなかった国などの需要が増加していることも、コーヒー不足の不安につながっています。
霜害や干ばつによる高騰
コーヒーの不作を起こしやすい要因のひとつに「霜害」があります。霜に弱いコーヒーの木が影響を受けて収穫量がぐんと下がると、その年の需要と供給のバランスが崩れてしまいます。
過去を見てみると1975年に起こった「霜害」では、それまで1ポンド(約450g)あたり、80セントで取引されていた豆が、その8倍以上にもなる1ポンドあたり350セントで取引された例がありました。
その他、干ばつなどでも価格の高騰が起きやすく、一定の周期でコーヒーの価格が大きくゆらされる天候被害が起こっています。
相場のインパクトが大きいブラジルの影響
コーヒーは赤道周辺の生産国で育ちますが、供給量でみてみると全世界のコーヒーの生産のうち3分の1がブラジル産のコーヒー豆です。なので、そのブラジルで大きな天候被害が起こると、コーヒーの価格にダイレクトに影響してきます。前述した1975年の「霜害」も、ブラジルで起こった被害です。
希少性
また、小規模農園で作られている希少な品種で、かつ品質も高いコーヒーなどは、大量に生産できない分、より珍しいこともあり、高額で取引されることがあります。
さまざまな要因で変動するコーヒーの価格。
とはいえ、店頭のコーヒー価格が急騰するのは、暮らしの中で受け入れ難いものだと思います。企業は、その原価の価格変動を吸収すべく、できうる限りの調整や生産の工夫を最大限に行っていますが、それにも限界はあり、仕入れ値の変動が商品に影響せざるを得ない側面もある、ということが、少しおわかりいただけましたでしょうか。
コーヒー消費人口の拡大、温暖化による栽培地の減少
ではこの先のコーヒー価格についても考えてみましょう。
前述の通り、コーヒーの品質管理やその生産量が安定していて、国際間の力の変動が少なく、需要と供給のバランスがとれていれば価格がそれほど影響を受けることありません。けれど、残念ながらこの先の未来をみてみると、展望はそれほど甘くはなさそうなのです。
コーヒーの消費人口が増える
コーヒーはもともとヨーロッパやアメリカなど、いわゆる先進国を主な消費国として国際間取引をされていました。けれど昨今は、人口の多いインドや中国などがその経済発展にともない、嗜好品であるコーヒーを以前より多く消費するようになってきています。
また世界の人口は増加傾向にあり、2011年には約720万トンだった世界のコーヒー消費量は、2021年の統計では約997万トンを超えました(※)。今後も人口の増加にともなって、コーヒーの愛好者は増え、消費が加速することが容易に想像できます。
※出所:ICO、米国農務省 (換算などUCCで加工)
温暖化でコーヒーの生産地は減る
コーヒーは「コーヒーベルト」と呼ばれる赤道付近のエリアの、主に気温15℃~24℃の寒暖差がある高地で栽培されます。しかし温暖化が進むと、栽培に向いた高地エリアがどんどん減り、コーヒーの産地が激減することが予想されています。
また「生産国での離農」も問題になっています。
貧困等の問題から、価格の変動の大きいコーヒーの栽培を離れるコーヒー農家が増えてきている現状があります。それが加速すれば、今後さらにコーヒーの供給量は減っていくことも予想されます。
未来もコーヒーを楽しむために、わたしたちにできること
きっとこの記事を読んでくれている方は、コーヒーが好きな方だと想像しますが、この先のコーヒーも、たまにしか飲めない高級品ではなく、日常的に楽しめるものであってほしいですよね。それはコーヒーファンだけでなく、私たちコーヒーに関わる者の共通の願いです。私たちの未来の、充実したコーヒーライフのために、世界規模でいろいろな取り組みが始まっています。
生産者の生活を守る正当な取引
生産者の離農をふせぐためには、コーヒーが適正な金額で取引されなければなりません。生産が途切れてしまわないように、適正な価格を意識した経済活動を消費国が行うことで、生産者の生活が守られ、コーヒーの安定した栽培が行われるようになります。
UCCでは、「2030年までに自社ブランドを100%サステナブルなコーヒー調達に」を掲げ、持続可能なコーヒー産業に貢献したいと思っています。
人々を豊かにする手助けを|UCCのサステナビリティ | コーヒーはUCC上島珈琲
地球温暖化への対策
高地で栽培されるコーヒーは、温暖化によりその栽培エリアが限られていきます。今後の栽培地の減少を防ぐためには、地球温暖化にアプローチする必要があります。世界では地球温暖化を引き起こす二酸化炭素ガス(CO2)の排出量をカットすべく、さまざまな取り組みが行われています。
UCCでも、「2040年までにカーボンニュートラルの実現」を目指し、UCCグループ各事業者からの直接排出だけでなく、関連する他社の活動もふくめて検討することが急務として対策を推進しています。
自然を豊かにする手助けを|UCCのサステナビリティ | コーヒーはUCC上島珈琲
品種改良による努力
また、コーヒーにはお米のように品種があると前述しましたが、「アラビカ種」よりも取引価格の低い「カネフォラ種(ロブスタ)」は、病害虫に強く、栽培できるエリアも広いことが知られています。もし、「カネフォラ種」でありながら「アラビカ種」のような繊細な味わいを持つ品種が作れれば、コーヒー全体の生産量にも影響があるかもしれません。
コーヒーの価格から見える問題に目を向けて
今年、食品価格が値上がりすることが、たびたびニュースとなりました。
コーヒーにおいては、その背景には、国際間取引や人口増加、産地減少など、コーヒーの直面するさまざまな問題があります。
いま目の前のカップに注がれた1杯のコーヒーが、もし手の届きにくい価格になって、毎日嗜むことが難しくなってしまったとしたら…?
コーヒーの抱える問題に気づいた今なら、私たちの次のアクションを変え、その未来を変えることができます。飲みたいときに、いつでもコーヒーが飲めるように、明日もこの先もずっとおいしいコーヒーを楽しめるように、その幸せをお届けするために、UCCはこれからも取り組みを続けていきます。
今回教えてくれたのは・・・
小山 勝宝 Katsutaka Koyama ・UCCコーヒーアドバイザー ・UCCコーヒー鑑定士 ・(ブラジル)コーヒー鑑定士 ・(アメリカ)CQI認定Qアラビカグレーダー ・(アメリカ)CQI認定Qロブスタグレーダー