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りんごの王国が誇る逸品、『薄紅』(おきな屋)
今回ご紹介するのは青森県の銘菓、「おきな屋」の『薄紅』(うすくれない)。薄く輪切りにしたりんごを、砂糖蜜で煮て乾燥させたお菓子です。白い粉砂糖の下から、飴色のりんごが透けて、ほんのり薄い紅色。そっと噛むと濃縮されたりんごの風味があふれてきます。コクがあるのにしつこくないのがとっても不思議。
「おきな屋」は、大正7年(1918年)、青森市の新町に開いた朝生屋から始まりました。朝生とは、おはぎや大福餅など、朝から作ってその日のうちに売るお菓子のことです。2代目のときに本格的な和菓子屋となり、3代目へ。『薄紅』が開発されたのは昭和55年(1980年)ごろのことです。りんごで有名な青森県ですが、当時りんごのお菓子といえば、羊かんやりんごの形をしたものばかり。なんとかりんごそのものをお菓子にできないかと考えましたが、単なる煮りんごでは、日持ちもせず持ち歩くにも不便です。そこで乾燥という一手間を加えることで課題を解決。『薄紅』は青森を代表する銘菓となり、今では地元で愛されているだけではなく、県外へのお土産としても喜ばれているとのこと。
りんご文化の原点、「紅玉」の懐かしい味わい
アジアの山岳地帯から世界へと伝わっていったりんご。その木が青森に初めて植えられたのは明治8年(1875年)だそうですが、その少し前に、弘前市に招かれた米国人宣教師ジョン・イング師が、クリスマスにりんごを配ったというエピソードも残されています。そして約150年の年月を経た今、青森県のりんご生産量はなんと全国の約60%!「りんご王国」とも呼ばれている青森県、まさにその名にふさわしい産地と言えますね。
現在、世界では約15,000種、日本では約2,000種、青森では約50種類のりんごが栽培されていますが、『薄紅』に使用されているのは「紅玉」という品種。アメリカ原産ですが、青森にも早くから伝わり、りんご文化の原点ともいえる品種です。多くが改良を重ねて甘くなっていく中、「紅玉」は野生的な酸味と豊かな香りを大切に持ち続けています。煮崩れしにくく風味も失われないので加工用にもぴったり。『薄紅』のあふれるような甘酸っぱさは「紅玉」の個性あってこそ、なのです。
幼いころの夕焼けを思い出させる、本物のおいしさ
SNSで映えることを狙ったお菓子があふれる昨今。でも、おきな屋が大切にしているのは、青森に根ざした本物を育てること。素材そのものの美しさ、おいしさを引き出すこと。でもそれを叶えるにはなかなか効率よくとはいきません。たとえば『薄紅』は輪切りにしたとき直径6、7cm前後になる紅玉だけを選別しますが、大きさにばらつきがあるため、使えるのは全体のわずか2割ほど。さらにそれをグラニュー糖の蜜が入った大釜で煮て、網に並べ、乾燥庫で24時間以上乾燥させるのだそうです。
でもそんな『薄紅』を手にとり、眺め、食べてみれば、きっとその価値がわかるはず。自然の色。自然な甘酸っぱさ。箱の中のリーフレットにはこんなひと言が。「りんごの香に、幼いころの夕焼けが滲んで見えてきましたら幸甚」。本当に、そんな懐かしさを感じるお菓子です。
【コーヒーマリアージュ】『薄紅』には、ほのかな酸味と深みのあるコーヒーを
ここからは、UCCのR&Dセンターで味わいに関するデータ分析の担当者が解説します!
それではコーヒーマリアージュ、してみましょう!
『薄紅』は、りんごの風味を丸ごと濃縮したような味わいのお菓子です。噛むごとに、りんごの酸味をふくんだ爽やかな甘さが、口いっぱいに広がります。この濃厚な果実感をさらに引き立てるおすすめコーヒーは、フルーティーな酸味を忍ばせながらも、しっかりしたボディ感のあるコーヒーです。
浅炒りのすっきりしたコーヒーでも良いですが、ある程度ボディ感もあるほうが、『薄紅』の濃厚さに負けることなく、芳醇なマリアージュが実現できます。コーヒーの香りが主張してきたかと思いきや、『薄紅』の甘みを巻き込んでひとつになり、最後にはまたりんごの風味がふわりと帰って来る、そんなバトンタッチの連続を楽しめるのも、この組み合わせの魅力です。
これから、吐く息の白くなるような寒い季節になりますが、甘い『薄紅』と深みのあるコーヒーで、ぬくもりのある時間を楽しみましょう。
『薄紅』のベストパートナーは『ゴールドスペシャル リッチブレンド』
『薄紅』に合うボディ感のあるコーヒーは『ゴールドスペシャル リッチブレンド』です。
使用している豆は、産地や銘柄ごとに焙煎したのちにブレンド。焙煎時の火加減も秒単位でコントロールするというこだわりから生まれた「ゴールドスペシャル」シリーズ。中でも『ゴールドスペシャル リッチブレンド』は深みのあるコクが特長です。『薄紅』と味と香りのバトンタッチを心地よく繰り返しながら、豊かなマリアージュを叶えてくれるでしょう。
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「までいに」育てられた赤い実たちのマリアージュ
果実の風味が凝縮した『薄紅』ですが、芯の部分は初夏に咲く花、まぶされた粉砂糖は冬に降り積もる雪を想起させ、まるで青森の四季が見えてくるようです。津軽地方の気候はとても厳しいものですが、春夏秋冬の変化が上質なりんごを育て、冬がしっかり寒くなることで、りんごの色も美しく出るのだそうです。
一方、コーヒーの故郷は赤道近く。乾季と雨季、ある程度の寒暖差は必要ですが、四季の変化、とくに霜や豪雪は大敵となってしまいます。
対照的な環境から生まれた『薄紅』とコーヒーですが、両者に共通するのは、愛情と手間をかけて育てられた、美しい赤い実から生まれたということ。
りんごは収穫までに、剪定、摘花、授粉、支柱入れ、葉摘み、日光をまんべんなく当てるための反射シート敷きや玉まわしなど、休む間もなくケアしていかないといけません。コーヒーもまた、苗木から開花、実の収穫までには気の遠くなるような作業が積み重ねられます。
北国の赤い果実から生まれた『薄紅』。南国の赤い果実から生まれた『ゴールドスペシャル リッチブレンド』。津軽弁では「とても丁寧に」を「までいに」と言うそうです。ぜひ、それぞれを「までいに」育てた人々にも想いを寄せながら味わってみてください。収穫までの苦労や喜びが、マリアージュをよりあたたかいものにしてくれるでしょう。
ご紹介した青森県の銘品「薄紅」は以下でお買い求めいただけます。 風韻百菓おきな屋 オンラインショップ
半澤 拓(はんざわ・たく)
2011年入社。UCCの研究施設イノベーションセンターにて研究開発業務に携わる。
2016年にコーヒーと食べ物の食べ合わせを分析する「フードマッチングシステム」を開発。コーヒーの味や香り、食べ合わせに関する研究報告やセミナーなど多方面で活躍。
UCCの「フードマッチングシステム」ほか、おいしい!を極める技術について興味のある方は、ぜひこちらもご覧ください。
▼コーヒーマリアージュについての記事はこちら
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