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フラスコを使った実験のような「サイフォン」
カフェでフラスコに入って提供されるコーヒーを見たことがありませんか。これは「サイフォン」というコーヒーの抽出器具です。なんだか魔法や理科の実験のようで、できあがるまでの過程を眺めているのも楽しいですよね。でも「自分で挑戦するにはちょっとハードル高そうだなあ」と思われている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「ジャパン サイフォニストチャンピオンシップ 2019」で優勝した実績を持つ、UCCコーヒーアカデミーの中井千香子講師に、サイフォンの魅力と基本的な淹れ方を聞いてみました。
サイフォンで淹れたコーヒーは、しっかりした味と香りが特徴
「サイフォン」はもともとギリシャ語で「管」を意味し、元になる原理はすでに古代ギリシャで発明されていたそうです。コーヒーの抽出器具としての「サイフォン」は、19世紀にヨーロッパで開発され、日本には大正時代に伝わりました。かつては天秤の形をしたものも多かったようです。
見た目が華やかなだけではなく、サイフォンで淹れたコーヒーはしっかりした味と香りが楽しめます。また高い温度のまま出せるため、熱いコーヒーを長いこと楽しめるのもうれしいですね。
まずは器具に親しんで
サイフォンは一見、手順が多くて難しそうに見えるかもしれませんが、慣れてくればちゃんとおいしいコーヒーが淹れられます。まずは器具など、淹れる前に用意しておくものをご紹介しましょう。
1.ロート:サイフォンの上に取り付けるパーツ。「上ボール」とも呼ばれています。今は筒形ですが、昔はボール型のものが多かったためとか。
2.フラスコ:サイフォンの下のパーツ。「下ボール」とも呼ばれています。
3.ヒーター: サイフォンを温める熱源です。今回使用しているのは、業務用で使われていることが多い「光サイフォン」と呼ばれるハロゲンランプ。見た目にも美しく、加熱も電子制御で微妙なコントロールができます。
ご家庭用としては、サイフォン器具を購入するとセットになってついてくるアルコールランプなどが熱源として一般的です。
4.フィルター :ろ過器にセットして使います。素材は、フランネルと呼ばれる起毛した布で作ったネルフィルターが一般的。
5.ろ過器: フィルターをつけ、ロートに取り付けて使用します。先からたれている鎖の部分は、ボールチェーンと呼びます。
6.竹べら :コーヒーの粉とお湯を攪拌するために使います。(写真は中井講師仕様の削り込まれた竹べら)
その他、布巾や計量スプーン、スケール、ドリップポッド。そしてコーヒー豆(粉)やお湯、注ぐカップも用意しましょう。
最近では、自宅で手軽に楽しめるよう、基本的な器具がセットになったものも売られているので、チェックしてみてくださいね。
サイフォンを使ったコーヒーの淹れ方
それでは、実際に淹れてみましょう。
1.フィルターをろ過器につけ、ロートにセットする
ろ過器にフィルターをセットします。
ネルフィルターは使い捨てではく、何度か使用したのちに取り換えるため、最初はろ過器とは別々になっています。使用する前に紐を締めてセットしましょう。また、初めて使用するネルフィルターは、糊や汚れなどが付いているので、コーヒー液で20分ほど煮てから使います。
フィルターをつけたろ過器は、お湯を通して温め、水気を切ったらロートにセットします。ロートの真ん中からずれないように、しっかり調整します。
2.フラスコでお湯を沸かす
フラスコにお湯を160ml(1杯分)入れ、フラスコの外側についた水滴をよく拭いてから、熱源にかけて沸かしはじめます。水滴がついたままだと、破損の原因になってしまう可能性があるので、必ず拭く習慣をつけましょう。
3.ロートを軽くフラスコにセットする
ろ過器から垂れているボールチェーンを垂らしながら、ロートをフラスコにゆっくり差し込んでいきます。ボールチェーンは沸騰石の役割をしており、チェーンに伝わる泡で、お湯の沸き具合が確認できます。
この時、まだロートは完全に差し込まず、フラスコの縁の部分(ゴムとガラスの境目)に寄り掛からせる程度に差し込んでおきます。
4.コーヒーを準備する
お湯が沸くまでの時間を使って、コーヒーの豆を挽いたり、粉量をはかったりしておきましょう。量は中細挽きなら12g、中挽きなら15g、粗挽きなら18gがおすすめですが、迷ったらまず中挽きを。慣れてきたら好みに合わせて調節しましょう。
5.沸騰したらロートにコーヒーを入れ、フラスコに差し込む
お湯が完全に沸騰すると、ボールチェーンを伝って泡が次々と上っていきます。沸騰を確認できたら、ロートにコーヒーを入れ、フラスコにしっかりと差し込みます。沸騰を確認せずにいきなりロートを差し込むと、お湯が吹き出すことがあるので、注意してください。
6. 1回目の撹拌(かくはん)をする
ロートを差し込むとすぐに、フラスコ内の温まった空気が膨張して、お湯をロートの方に押し上げていきます。全部は上がりきらず、30mlくらいは下に残った状態で止まります。
ロート内に上がってきてコーヒーの粉と合わさったお湯を、竹べらで素早く円を描くように数回撹拌します。これはコーヒー粉に含まれているガスを抜き、お湯とコーヒーをしっかりとなじませるためです。
7. 弱火で放置して抽出する
ここで弱火にして、15秒ほどそのままにして抽出します。好みにより抽出時間を長めにしてもかまいませんが長すぎると雑味が出てしまうので、1分を超えないように注意しましょう。
この抽出している状態のとき、上から、細かな泡、コーヒー粉、液体の3層になっているのが理想の状態です。ボコボコと大きな泡が出ているときは、フィルターがずれている可能性があるのですが、その泡の動きで過抽出になってしまうため、竹べらでフィルターの位置を中央に戻すようにしてください。
8.火を消して2回目の攪拌をする
火を消します。するとフラスコ内の圧力が下がり、今度はコーヒー液が下へと落ちてきますので、火を消したらすぐにもう一度、竹べらで軽くかき混ぜます。
コーヒーが落ちるのに時間がかかりすぎると雑味が出てしまうので、スムーズにろ過されるのをアシストするためです。また攪拌することで、細かい粒子が先に落ちてコーヒーに混ざってしまうのを防ぐこともできます。
9.コーヒーが落ち切ったら、カップに注ぐ
コーヒーがフラスコへ完全に落ち切ったらロートを外し、カップに注ぎます。抽出後のコーヒー粉にも注目してみてください。ドーム上に盛り上がった表面に、コーヒーの雑味の原因となる細かな泡があり、下の方には粗めの層ができているのが、クリアな味わいのコーヒーが抽出されている目安になります。
高温で仕上がるので、飲むときには火傷しないように気をつけて!
サイフォンの淹れ方は、コーヒーアカデミーのYoutubeでもわかりやすく解説しています。ぜひチェックしてみてくださいね!
こだわりを極める面白さも
最初にお伝えしたように、サイフォンは、手順を覚えればおいしいコーヒーが安定して淹れられる方法ですが、一方で理想や個性をどこまでも追求していかれる奥深さも持ち合わせています。
さまざまな組み合わせを試せる面白さ
同じ淹れ方でも、豆の産地、焙煎度、焙煎後の経過時間、挽き目などが変われば、まったく違う個性のコーヒーになり、その日の気温や湿度も微妙な変化をもたらします。また意外にも違いの鍵を握るのは、攪拌のスピードや強さ。それらの組み合わせ次第で、味や香りに無数のバリエーションが生まれるのです。
道具のカスタマイズで、自分らしさを
器具や道具など使うものが多い分、自分らしいこだわりもたくさん持てる楽しさもあります。中井講師は、不織布のフィルターを特注したり、ろ過器の金属部分を削って使いやすくしたり、攪拌するための竹べらを、しなるようになるまで薄く削り込んでいます。
意外なサイフォンの使い途
サイフォンはコーヒーの抽出にとどまらず、最近ではそのしくみを応用して、出汁をとり和食に活かすなど、さまざまな使い方が広がっています。
中井講師は、見た目の華やかさやおいしさはもちろんのこと、淹れながらお客さまとの会話もはずむのがサイフォンの魅力のひとつだと語ってくれました。淹れるプロセスから楽しめるサイフォン、皆さまも機会を見つけてぜひ挑戦してみてください!
今回教えてくれたのは・・・
中井 千香子 Chikako Nakai UCCコーヒーアカデミー講師 2013年UCCグループに入社後、店舗での経験を積む。現在はUCCコーヒーアカデミー講師ほか、製品開発など、幅広い業務に従事。2018年には「ジャパン ブリューワーズ カップ」にて優勝を果たし、世界大会「ワールド ブリューワーズカップ2019」では第4位に入賞。2019年には「ジャパン サイフォニスト チャンピオンシップ」で優勝し、2023年の秋に行われる「ジャパン サイフォニスト チャンピオンシップ(WSC)」に出場が決まっている。
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