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エルサルバドルの生産国としての基本情報
エルサルバドル共和国は中米の中部に位置する国で、北部はグアテマラおよびホンジュラスと国境を接しています。南部は太平洋に面していますが、中米の国の中で唯一、カリブ海に面していません。
面積は約2.1万㎢と日本の四国よりやや大きい程度ですが、人口は約630万人。
アメリカ大陸の大陸部にある国の中でもっとも国土が狭く、もっとも人口密度が高いことが知られています。
人口の90%が、メスティーソ(スペイン人と先住民の混血)です。
首都はサン・サルバドル。国名にもつけられている「サルバドル」はスペイン語で“救世主”を意味し、16世紀にスペイン軍が築いた砦に、イエス・キリストに敬意を表してサン・サルバドルと名を付けたことが由来と言われています。
他の中米諸国と同様に火山が多く、20以上を有します。最高峰はサンタ・アナで、標高2,381m。5つが活火山で、標高2,130mのサン・ミゲルは2013年に噴火が記録されています。
火山活動に並び、地震が多い事でも有名。沿岸部では津波の被害もしばしば発生しています。
グアテマラ、ホンジュラスと並び、マヤ文明の遺跡が発見されています。そのうちのひとつ、ホヤ・デ・セレン遺跡は世界文化遺産に登録されています。
エスサルバドルは、経済の安定が課題
鉱物資源に乏しく、主な輸出産品は衣類で輸出額の30%以上を占め、そのほとんどが米国向けに輸出されています。
国の通貨として2001年に米ドルを導入。それまで使用していた「コロン」の流通を停止、米ドルへの一本化が図られました。また、2021年には世界で初めて暗号資産のビットコインを法定通貨として認める国となりました。
エルサルバドルの国民的なスポーツはサッカー
サッカーは、エルサルバドルでも凄まじい人気を誇ります。(ただしW杯で予選通過したのは過去2回だけ)。
1969年には、それまでにも移民や貿易の問題を抱えていた隣国ホンジュラスとの間で、サッカーのW杯地区予選をきっかけに「サッカー戦争」と呼ばれる軍事衝突にまで発展しました。
人々の食生活は、トウモロコシが主食。トウモロコシ粉の生地で具を包み、薄く延ばして焼いた「ププサ」という料理がよく知られています。
エルサルバドルのコーヒーの歴史など
1880年代にコーヒーが持ち込まれ、それまでのインディゴ(天然の染色原料)に置き換わって、主要輸出産品となりました。
当時は輸出額の90%をコーヒーが占めていたと言われますが、コーヒー栽培は一部の大規模な土地を保有する生産者によって行われていたため、ほとんどの国民に富がいきわたることはありませんでした。
生産量の激減を経て、「量」から「質」へ
1970年代にはエルサルバドルは小さな国土にも関わらず、世界で4番目のコーヒー生産国となります。しかし、コーヒーに依存しすぎたことなどによる経済の不安定化を背景に、1979年には内戦が勃発。内戦とそれに伴う混乱は1992年までの長期にわたって続き、これによって、コーヒーの生産量も大きく減少しました。
さらに、生産量の約60%を占めるといわれるブルボン種は病虫害への耐性が弱く、大規模なコーヒーサビ病への感染により、植えられてから年月が経っていた古木の多くが枯死してしまいました。その結果、2011年から2013年にかけて生産量は1/3程度まで激減しました。
1995年には、コーヒーは総輸出額の約30%を占めていましたが、2014年以降は大体2%前後で推移しています。
未だ生産量の十分な回復は見込まれていませんが、その代わりに、より品質の高いスペシャルティコーヒーの栽培・輸出に力が入れられています。
また、現在では、245ヘクタール以上の農園を一人のオーナーが持つことは禁止されており、ほとんどのコーヒー生産者が20ヘクタール未満の規模の土地で生産しています。
エルサルバドルで採れるコーヒーの特徴
国を東西に走る複数の山脈の近くで、広くコーヒーが栽培されています。
生産地として、アロテペック=メタパン、アパネカ=イラマテペック、エル・バルサモ=ケサールテペック、チチョンテペック、テカパ=チナメカ、カカウワテケの6つの地域が知られています。
栽培標高は500〜2,000m。火山を含む山脈の裾野で栽培されていることが多く、火山性土壌と高い標高という条件が揃った、コーヒー栽培に適した環境です。
収穫期のメインは10月から2月、遅いところでは4月まで続きます。
エルサルバドルで生まれた品種「パカマラ」
ブルボン品種の他、ブルボン系統のパカスやカトゥーラも育てられていますが、近年、注目されているのが「パカマラ」です。パカスとマラゴジペを親に持つ大粒品種で、エルサルバドルのコーヒー研究機関ISIC(Instituto Salvadoreño de Investigaciones del Café)において開発されました。
多様かつジューシーなトロピカルフルーツフレーバーを持ち、地域ごとに風味が変化することから、「ゲイシャ」同様にスペシャルティコーヒーの代名詞的に各国からの関心を集めています。
「カップオブエクセレンス」などの国際品評会においても、何度も優勝や上位入賞を飾る実績を上げています。
有名農園が積極的に植え始めたことで中米全体でもトレンドとなり、中でも北部チャラテナンゴ地域で栽培されるパカマラ種は風味特性が際立つことから、世界中のロースターや競技会で使用されています。
エルサルバドルの味わい・等級
ブルボン品種が多いため、明るい酸味を持ち、クラシカルでバランスの取れたコーヒーとなっています。
一方でパカマラは、スイートスパイスや多様なトロピカルフルーツが感じられ、フルボディでジューシーな印象の味わいが特徴です。
等級は、産地の標高によって以下の3つに選別されます。
・SHG(ストリクトリー・ハイ・グロウン) 標高1,200m以上
・HG(ハイ・グロウン) 標高900〜1,200m
・CS(セントラル・スタンダード) 標高500〜900m
※一般的にスペシャルティコーヒーはSHGに該当します。
農事調査室から「エルサルバドルの栽培技術を参考に、直営農園でのオリジナルコーヒーの開発に取り組んでいます」
2012年のサビ病蔓延以降、エルサルバドルのコーヒー産業は2極化してしまいました。
一般流通品は、病気に抵抗力が無く収穫効率の悪いブルボンから、耐病性の強いハイブリッドへの植え替えが進みました。一方、高付加価値なスペシャルティコーヒーの世界では、パカマラやゲイシャ等、比較的栽培は難しいものの風味が良い品種が主流となっています。
農事調査室では、低地での栽培に向き、且つ風味豊かなパカマラ品種に着目し、栽培条件に共通点の多いハワイコナの直営農園で検証を開始しました。
未だ結果は出ていませんが、エルサルバドルの栽培技術や加工工程を参考に、ハワイコナオリジナルを作り上げたいと考えています。
UCC 農事調査室 主要原産地に出向き、コーヒーの栽培状況などを調査・研究しています。 担当 日比 真仁、中平 尚己、井上 隆裕
15回にわたってお送りしてきた「コーヒーベルト・コレクション」は、今回で最終回です。
世界のさまざまな産地、生産者の方々とその努力を知ることで、毎日のコーヒーがいっそう味わい深くなったのではないでしょうか?
またの機会に、各産地の最新情報をお届けしていきますので、どうぞお楽しみに。
生産地ごとのコーヒーを味わってみたくなった方へ
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「UCCカフェメルカード」は、全国で22店舗(2023年1月現在)を展開しているUCCのコーヒー専門店です。お店のテーマは「MEET YOUR BEANS 私好みのコーヒーに出会う場所」。
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