実際に飲んだことはあるけれど、各メニューの特徴や味の違いは、意外と知らない方も多いのでは。
今回は喫茶店やカフェでよく目にするコーヒーメニューの特徴をご紹介します。定番メニューやミルク系、少し変わったアレンジメニューまで、コーヒーの種類別の特徴を知っておくことで自分の好みやその時の気分に合ったコーヒーをチョイスできます。
INDEX
王道コーヒーメニューの種類
ここからは、コーヒーの種別ごとに解説していきます。まずは歴史ある昔ながらの王道コーヒーから。定番のアメリカンからなかなかお目にかかれないターキッシュまで、歴史的背景と合わせてその特徴をご紹介します。
■ アメリカンコーヒー
もともと、アメリカでお茶代わりに軽くソフトなブラックコーヒーとして飲まれていたものが、日本に広まったのは1970年代のこと。この頃から「アメリカンコーヒー」として提供されはじめ、今でも喫茶店で目にする定番メニューになりました。
当時から喫茶店のメニューといえば、お店の看板コーヒーである「ブレンド」、それよりも軽くて飲みやすい「アメリカン」が仲良く並んでいる光景がお馴染みでした。
アメリカンコーヒーの一般的な定義は「焙煎度の浅い豆で淹れたコーヒー」ですが、当時は濃く抽出したコーヒーをお湯で割って提供していたお店も少なくなかったようです。いまでもそういうお店はありますが、もともとの定義が明確でない以上、間違いとはいえないかもしれません。
ちなみに、アメリカで飲まれていたコーヒーすべてが軽いタイプだったわけではなく、ニューオリンズやアトランタなどフランス系移民の多い南部では、深炒りのフレンチスタイルが主流だったそうです。
■ ターキッシュ(トルコ式)コーヒー
英語でターキッシュコーヒーと呼ばれるトルコ式コーヒーは、コーヒーに詳しい方ならご存知かもしれません。しかし、実際に飲んだこともある方はそう多くないのでは。
トルコ式コーヒーは、「ジャズベ(CEZVE)」や「イブリック(IBRIK)」と呼ばれる真鍮(もしくは銅製)の小さなひしゃく型の抽出器具を使い、細挽きにしたコーヒーを煮出して作ります。粉を濾さずに上澄みをすすって飲むため、舌のうえにざらっとした印象が残りますが、それも含めて楽しむのがトルコ式コーヒーの特徴です。
「濾さないコーヒー」は、馴染みがないぶん好き嫌いは分かれるかもしれませんが、実は、コーヒーの粉を濾す抽出方法は1710年頃にフランスで始まったといわれ、それまでのコーヒーは煮出して飲むものでした。
本場トルコはもちろん、日本でもエスニック料理店などで提供しているお店もあるので、見つけたときは古(いにしえ)の味を体験してみてはいかがでしょうか。
■ ダッチコーヒー(水出しコーヒー)
あまり聞き慣れない「ダッチコーヒー」ですが、「水出し」「低温抽出」「コールドブリュー」といった名称でも提供されています。いずれも、「低温でゆっくり時間をかけて抽出したコーヒー」を指しています。
その発祥は17世紀にさかのぼり、オランダ領だったころのインドネシアで、壺の中に水とコーヒーを入れ、地中に埋めて抽出したのが始まりなのだとか。オランダ人(Dutch)が考案した淹れ方ということでダッチコーヒーと呼ばれています。
大きな球形のガラスに水を入れた抽出器具が並ぶ昔ながらの喫茶店では、いまでも「ダッチーコーヒー」の名でメニューに並んでいたりします。
コーヒーが熱にさらされないぶん、温度変化による劣化が起きにくいのが特徴。コーヒーの持つ味わいがそのまま水に抽出されるため、素材そのものの味が際立つ淹れ方です。
できあがりの温度が低いためアイスコーヒーにはもってこいですが、湯煎で温めれば、ホットコーヒーとしても楽しめます。
水出しコーヒーのアレンジレシピはこちらの記事も参考にしてみてください。
カフェメニューの定番、ミルク系コーヒーの種類
カフェの定番メニューでありながら、意外と違いを知らない方も多いミルク系メニュー。その違いを知ると、自分好みの一杯が見つかるかもしれません。
■ カフェオレ
たっぷりミルクを加えたマイルドな味わいで、すでになじみ深いメニューのひとつですね。
「カフェオレ」とは、フランス語で「café au lait」のことで、cafeはコーヒー、laitがミルク、つまり「ミルク入りコーヒー」を意味します。深めに焙煎したドリップコーヒーと温めたミルクを同量程度合わせれば、カフェ・オ・レの完成です。
ミルクの甘さもあいまって、コーヒーの風味がまろやかに伝わる優しいメニューです。コーヒーが苦手な場合にも、気軽に楽しめるでしょう。
自宅でカフェオレを作る場合は、コーヒーを濃い目に作るのがポイントです。
半分がミルクが占めるカフェオレでは、ミルク感が勝ってしまうこともあります。焙煎度でいえばシティロースト以上の深炒りのコーヒーを使い、「そのまま飲むには、ちょっと濃いかも……」くらいになるよう、抽出してみてください。
淹れ方は様々ありますが、カフェオレ好きな方におすすめしたいのは「フレンチプレス」です。
プレスのフィルターが金属製なので、ペーパードリップの紙フィルターと比べると、コーヒーの持つ油分(アロマオイル)を適度に液体側に残すことができ、ミルクとより相性の良いコーヒーを淹れることができます。
■ カフェラテ
カフェオレがドリップコーヒーをベースにしているのに対し、カフェラテはエスプレッソがベースに。高圧の水蒸気で一気に抽出し、ミルクを加えて完成です。カフェオレに比べてコーヒーの苦味をじっくりと感じられます。
「カフェオレ」がフランス出身なら、「カフェラテ」はイタリア出身のコーヒー。こちらも、「ミルク入りコーヒー」を指す「Caffè Latte」です。
イタリアでは専用マシンで圧力をかけて淹れる「エスプレッソ」が一般的で、そこに蒸気で温めたミルク「スチームドミルク」を組み合わせるとカフェラテの完成です。エスプレッソが約30mlに対し、スチームドミルクが約120mlと、ミルクの割合が多いのもカフェオレと違う点です。
■ カプチーノ
カフェラテ同様にエスプレッソにミルクを加えて作りますが、こちらは蒸気で温めた泡状のミルク(フォームドミルク)も加えるため、よりまろやかな味わいに仕上がります。
ミルクの泡に包み込まれたエスプレッソの風味は、カフェラテとはひと味異なるもの。エスプレッソとフォームドミルクのコントラストを利用して、表面にデザインを描きながら注ぐスタイルは、バリスタの腕の見せ所でもあります。
意外と種類が豊富!エスプレッソをベースにしたメニュー
圧力をかけてすばやく抽出するエスプレッソは、心地よい苦味と濃厚な風味が特徴です。
少し変わったアレンジメニューなど、エスプレッソをベースにしたカフェメニューをご紹介します。
■ エスプレッソ
カフェラテやカプチーノでも登場したエスプレッソ。深めに焙煎した豆を細かく挽き、圧力を加えながら一気に抽出しています。ドリップコーヒーと比べると、濃度の高い凝縮した風味が楽しめます。
そして、おいしいエスプレッソの証とも言えるのが、表面を覆う「クレマ」です。エスプレッソを抽出する際、水分(お湯)と油分(コーヒーのうまみ成分)が融合し、乳化現象を起こすことで生まれます。
香りを閉じ込め、口当たりを柔らかくする効果を担っているので、エスプレッソを飲むときにはぜひクレマをチェックしてみてくださいね。
■ カフェマキアート
淹れ方はほとんどカプチーノと同じですが、エスプレッソに対するミルクの比率が異なります。
厳密には定められていませんが、エスプレッソ(30ml)に少量のフォームドミルクを加えたもので、ミルクの量が少ない分、よりエスプレッソの風味を強く感じられる飲み方です。
ちなみに、マキアートはイタリア語で“シミ”のこと。表面に浮かんだミルクがそのように見えることから名付けられたアレンジメニューです。
■ アフォガート(アッフォガート)
アフォガートは、冷たいアイスクリームに熱々のエスプレッソをかけるイタリア発祥のデザート。エスプレッソの苦味とアイスクリームの濃厚なミルク感が口の中で合わさる感じは絶妙です。
ちなみに、アフォガートはイタリア語で「溺れた」のこと。エスプレッソに溺れたアイスクリームという、情熱的なネーミングもなんとなくイタリアらしくて素敵ですね。
■ シェカラート(シェケラート)
日本ではあまり見かけることのないシェカラートは、シェーカーを使用して淹れるイタリア風のアイスコーヒーです。
シェーカーのなかにエスプレッソ、ガムシロップ、氷を入れて急速冷却するため、シェーカーによって作られた泡が優しい口当たりに。
よりマイルドな風味になるため、むしろ普通のアイスコーヒーよりも飲みやすいと思う方もいるかもしれません。
■ フラットホワイト
オーストラリアやニュージーランドなど南半球から広まったといわれる、エスプレッソベースのコーヒーです。最近は大手のファストフード店でもメニューとして採用されているので、名前を聞いたことがある方も多そうですね。
淹れ方はカフェラテと同様で、エスプレッソにスチームドミルクを加えて作ります。ミルクが少なめなので、カフェラテに比べるとよりエスプレッソの味わいを楽しめます。
■ エスプレッソトニック
名前の通り、エスプレッソにトニックウォーターを加えて作るのがこの「エスプレッソトニック」です。
トニックウォーターとは、炭酸水にハーブや柑橘類由来のエキスと糖分を加えたもの。コーヒー感を消すことなく爽やかさをプラスしてくれます。初めて口にすると「意外な味!」と、思わず言葉が出てしまうかもしれません。
すっきりとした味わいの「アイスコーヒー×炭酸」のアレンジメニューは他にも。こちらの記事では自宅でも簡単にできるお手軽レシピをご紹介しています。
あわせて、ぜひ参考にしてみてください。
日本では馴染みがないかも?変わり種の「フレーバーコーヒー」
「フレーバーコーヒー」というメニューをご存知でしょうか。
ここまで紹介してきたコーヒーメニューに比べると、日本ではまだそれほど知名度はないかもしれません。
フレーバーコーヒーとは、レギュラーコーヒーに別のフレーバー(香り)を添加したコーヒーのことです。フレーバーに使われる材料は、シナモンなどのスパイス類からフルーツ、チョコレート、バニラなど多岐に渡り、甘い香りが使われることが多いようです。
コーヒーならではのコクと甘い香りを同時に楽しんで、コーヒーの新たな魅力を体感してみては。
こちらの記事では、蜂蜜や黒ごまを使ったコーヒーのアレンジレシピをご紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
種類別の特徴を理解して、自分好みのコーヒーを楽しもう
昔ながらのメニューや比較的新しいアレンジメニューを中心にご紹介しましたが、その定義、名称や作り方はお店によってもさまざま。
いつもの喫茶店やカフェに立ち寄ったら、メニューブックをいつもよりしっかり眺めて、新しいメニューにも挑戦してみてくださいね。
また、コーヒー豆が変われば味わいや風味も異なるので、同じメニューを違うお店で飲み比べてみると面白いかもしれません。
よりコーヒーを楽しみたいと感じたら、ぜひご自宅でもアレンジコーヒーにチャレンジしてみてください。その日の気分に合わせて、楽しみ方を変えられるのがコーヒーの最大の魅力です。
基本となるハンドドリップの淹れ方や必要な器具については、ぜひこちらをご覧ください。